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第一三共、なぜ大型海外M&Aで巨額損失の誤算?遠因の社内対立に拍車の懸念も

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買収価格に疑念も

 ランバクシーの6割の株式を買うのに5000億円近い巨額な資金を投下したことから、当時「高すぎる」との指摘も上がった。これに対し庄田氏は、「買収価格を判断するうえで、30年という時間軸を据えた。人口が増え、経済力が上がる新興国市場には躍進的な成長の可能性がある。(買収価格が)高いか安いかの判断は、第一三共とランバクシーが、今後何を生み出すかによって定まるのではないか。第一三共の株主の方にとっても、十分価値を生み出せる価格だと考えている」と反論。同時に買収に強い自信を示した。

 しかしその後、わずか半年で7割近い企業価値が消えてしまったが、当時から買収する際のデューディリジェンス(資産査定)が甘かったのではないかと指摘されていた。査定結果は契約内容に反映される。問題点が発見されれば買収価格は下がる。通常、企業買収においては、損失が生じた場合の補填が契約に盛り込まれることになるが、第一三共側は不測の事態に備えた条項を契約に盛り込まなかったといわれている。

 また、今回ランバクシー株の譲渡先であるサン・ファーマも、実は3月に西部グジャラート州の工場がFDAから禁輸措置を受けており、品質管理の問題を抱えている。ディリップ・サングビ社長は「(ランバクシーを吸収合併して誕生する)新会社では法令順守を徹底する」としているが、早くもランバクシーの二の舞いになることを懸念する声も上がっている。

●買収で分かれた明暗

 今回のランバクシー株譲渡は、サン・ファーマのサングビ社長が第一三共の中山譲治社長に打診したのが発端だった。第一三共にとって渡りに船の提案だった。

 今回の売却交渉を主導したのは、中山社長や財務担当、研究開発担当の取締役。いずれも旧第一製薬出身だった。旧三共の庄田会長は、交渉の当事者ではなかった。ランバクシー買収は「旧三共案件」と呼ばれていた。05年に対等合併したはずの第一三共だが、旧第一と旧三共の融合は進んでいなかった。むしろ、ランバクシー問題をめぐって対立は尖鋭化していた。こうした縦割り意識が、ランバクシー買収失敗の底流にある。

 ランバクシーの創業者一族は、FDAから禁輸措置を受ける直前にランバクシーを第一三共に高値で売却して逃げ切った。会社の売却で億万長者となったシン兄弟は、祖父から受け継いだインドの病院大手「フォルティス・ヘルスケア」を経営。現在はインド最大の病院チェーンを展開する「病院王」といわれている。

 一方、第一三共の14年3月連結売上高は前期比11.2%増の1兆1100億円、営業利益は同4.5%増の1050億円を予想。円安が利益を押し上げたほか、国内の医薬品販売が好調だったが、ランバクシーの減益が足を引っ張り、最終損益は650億円と2.4%減になる見込みだ。

 ランバクシーのM&Aでは、売った側と買った側が明暗を分けた。同社関係者の間では、早くも社長時代にM&Aを主導した庄田隆会長の経営責任を問う声が出始めている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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