その代表例がフライドポテトだろう。一度食べると、その後ふと食べたくなる習慣性を持っている点は、他のファストフードではあまりない。ファミリーで来店して食べたポテトやハンバーガーは、子どもの習慣性だけでなく、ビジネスパーソンである大人の習慣性にもつながる。

 そして、それを後押しするのがクーポン券だ。休日にファミリーで来店時に配布されるクーポン券を、平日のランチで使うようになるのだ。最近は、マクドナルドより安くて早い店はたくさんある。少しでもお小遣いを節約したいビジネスパーソンにとって、クーポン券のありなしは大きい要素だ。

 こうした戦略を頭に描くカサノバCEOは、現時点では止めることのできないマックカフェ戦略は進めつつも、ファミリー層の取り込みに躍起になっているのだ。その意味では、業績回復への前途は厳しいものの、明らかに改善の道を歩き始めているといえよう。

●復活の鍵(1):マックデリバリー

 マクドナルドが低迷している理由については、すでに数多くの分析がなされているが、ここでは復活のプランを考えてみたい。

 まず最初にマックデリバリーの早期拡充だ。マックデリバリーは店舗近隣の住宅、オフィスに宅配をするというものだ。地域によっても異なるが、デリバリーでの商品価格は店舗販売より約30円高い。そこにデリバリー料金が300円かかり、1500円以上から配送するというものだ。私は、毎週同じ時間帯に、マクドナルドの定点観測を東京・渋谷などの数店舗で行っているが、このマックデリバリーは着実に稼働率が上がっている印象だ。

 そして、これからますます稼働率が上がることだろう。なぜなら、マックカフェが導入されてから、マクドナルドには高齢者の来店が増えているからだ。店舗でマクドナルドを利用した高齢者が、自宅で食べたい時にマックデリバリーを利用するというケースはますます増えるはずだ。

 マクドナルド側がそれを狙っていることは、同社のテレビCMからも読み取れる。先日オンエアされていたポテト全サイズ150円のCMでは、小さな子どもがフライドポテトを食べるシーンがあるのだが、手に取ったポテトをおじいちゃんにあげるのだ。父親でも母親でもなく、おじいちゃんにあげる。これが意味するのは、マクドナルドが狙うのはファミリー層の中の子どもであり、高齢者であるということだ。子どもがマクドナルドに行きたいから、親が連れて行く。子どもがマクドナルドを食べたいから、おじいちゃんとおばあちゃんが一緒に行ったり、宅配で届けてもらう。これが、マックカフェに頼らないカサノバCEOの描く戦略なのである。

 もちろん、一度もマクドナルドを試したことのない高齢者もいるだろう。高齢化社会が進む中で、宅配ビジネスは確実に成長する。他のハンバーガーチェーンや牛丼チェーンより先に、宅配ビジネスを定着させることで、中長期的なビジネスの基盤をつくっているともいえる。

 宅配ビジネス広がりの兆しは徐々に見えつつある。例えばコンビニエンスストアチェーンのセブン-イレブンも、宅配ビジネスには力を入れている。マクドナルドがコーヒーを美味しくしたら、セブン-イレブンも店頭で美味しいコーヒーを提供するようになり、大ヒット商品となった。そして、「中食」というジャンルをつくり成功したコンビニ業界を相変わらず牽引しているセブン-イレブンが力を入れ始めている宅配ビジネスに、マクドナルドが勝負をかけるという構造が見えてくる。

●復活の鍵(2):スマイル

 筆者が前述のとおり定点観測をする中で、マックカフェの導入が浸透し始めたあたりから、多くの店舗で気になることがある。それは店頭オペレーション力の低下と、店員のホスピタリティの低下だ。期間限定メニューの増加、店頭からのメニュー廃止(現在は復活)、おしゃれな雰囲気の演出などで、店頭オペレーション力は落ちた。それを改善するために注文から60秒で料理を提供するというキャンペーンを実施したこともあった。これは客に対しての約束という意味合いだけでなく、店舗スタッフへの意識改革目的という意味合いが強かったと思われるが、あまり効果はなかった。調理場やレジで私語をするスタッフ、客が帰ろうとしているのに「ありがとうございました」も言わないスタッフに何度も遭遇した。

 何よりも以前、メニュー表にも書いてあったほど大事にされていた「スマイル」がなくなった。マクドナルドは美味しいものを食べに行く場所というより、みんなで楽しくなれる場所であったはずで、そこにはスタッフ全員のスマイルがあったはずだ。スマイルになろうとすれば、きびきびした動きでお客さんに喜んでもらう必要がある。「スマイル=0円」を店頭メニューに出す必要はないかもしれないが、直営店、FC店、社員、アルバイトに関係なくすべてのスタッフに対して、マクドナルドがお客さんに愛された原点であるスマイルの重要性を再認識させる教育が必要なのではないか。

 現時点では、消費者のマクドナルドに対する評価はとても低く、店舗にはいまだに客が戻る気配は少ない。しかし、カサノバ新体制になり、マクドナルド復活の兆しのようなものを筆者は感じられる。カサノバCEOが描く現実的なプランを成功に導くことができるかどうかは、単に事業戦略、店舗展開、メニューの魅力度だけの話ではない。スタッフ全員がスマイルという接客サービスの重要性を理解しているかどうか、それを本気で推進できるかどうかこそが、マクドナルド復活のカギといえよう。
(文=新井庸志/株式会社ホワイトナイト代表、マーケティングコンサルタント)

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