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自動車販売現場、なぜ警戒感広がる?2重増税に相次ぐ維持コスト値上げ、クルマ離れ加速か

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自動車販売現場、なぜ警戒感広がる?2重増税に相次ぐ維持コスト値上げ、クルマ離れ加速かの画像1「Thinkstock」より

 2014年3月期決算では、円安の恩恵を受けてトヨタ自動車など自動車メーカー各社が過去最高の好決算が見込まれる中で、国内自動車産業に早くも暗雲が立ち込めている。4月から消費税率が8%に引き上げられて、これまで駆け込み需要に沸いた全国の自動車販売の最前線では、今後、その反動減は避けられそうにない。自動車は就業人口が500万人を超えるなど裾野が広く、日本経済のけん引役ともいわれているが、この先、国内の新車販売がどこまで落ち込むのかは見通せないほどの危機感も漂う。

消費増税後はある程度閑古鳥が鳴くことは予想していたが、土日の店内がこんなに静まり返ったのは、都心で大雪が降り積もった2月以来」と話すのは、都内の自動車大手直営ディーラーの中堅営業担当者。通常の土日ならば家族連れなどが一日当たりで50〜60組訪れるが、4月第一週の週末は新車購入の商談に訪れた客はほとんどなく、数人の予約客が車検整備などのサービスを受ける程度だったという。

 増税前の駆け込み購入などで、13年度の国内新車販売台数は前年度比9.2%増の569万台となり、3年連続で前年度実績を上回った。このうち、軽自動車は同14.7%増の226万台と06年度の203万台を上回って過去最高を更新。軽自動車は車体サイズや排気量に制約があるが、燃費性能の向上と税負担などの維持費が登録車と比べても安いことから「庶民の足」としても人気が高く、新車販売に占める比率は39.7%と4割に迫るほどの勢いとなった。

 だが、「山高ければ谷深し」は相場の格言だが、今回の17年ぶりの消費増税では、それが国内の自動車市場にも当てはまりそうだ。

 自動車メーカー各社が加盟する日本自動車工業会の試算によると、14年度の国内新車販売(軽自動車を含む)は500万台を割り込んで前年度比16.5%減の475万台にとどまる見通しだ。08年のリーマン・ショック以降、久しぶりに活気づいた国内新車市場も、4月からの消費増税後の反動減がしばらく続く恐れがあるからだ。

●販売現場に広がる警戒感

 だが、セールスの現場では「そんな机上の想定よりもはるかに厳しい状況が続くのでは」と、警戒感が広がっている。消費税を3%から5%に増税された97年度は、消費増税後の落ち込みは前年度に比べて約101万台の減少となった。今回も自工会の予測では約95万台減とほぼ同様の台数を見込んでいるが、17年前とは自動車市場を取り巻く環境は様変わりしている。

 当時はバブル崩壊後の暗いトンネルからようやく抜け出し、回復の兆しがみえた時期だった。新車販売でも軽自動車ではなく登録車が主流で、本田技研工業(ホンダ)の「オデッセイ」がヒットするなど、ファミリカー向けの新ジャンルであるミニバンを中心に年間販売台数ベースで650万台以上の高い水準が続き、増税前の96年度は同730万台に達する勢いだった。しかも、増税後もしばらく600万台に迫る台数をキープしていた。

●維持費の負担増

 だが、ここ数年は少子高齢化が一段と加速し、若者のクルマ離れにも歯止めがかからない。加えて、自動車各社は低燃費・低価格のエコカーなどの開発に経営資源を集中させた結果、輸入車などの一部の車種を除き、本来の「走る歓び」を極めた魅力的な車種が少なくなったことも無視できない。さらに、デフレ下で可処分所得が減ったことから、マイカーなどの保有年数が長期化しており、買い替え需要も先細りする傾向にある。

 維持費の負担増も重くのしかかる。高速道路料金の「休日半額」などETC割引の縮小・廃止が決まったほか、4月からガソリン価格は円安による原油輸入コスト上昇に加え、消費税分と地球温暖化対策税(環境税)の「ダブル増税」となり、1リットル当たり全国平均で5円以上も上昇。駐車料金、カー用品なども軒並み値上がりしているほか、損害保険各社は非課税の自動車保険を相次いで値上げすると発表。今年度の新車販売の落ち込み見通しは、消費増税前の「駆け込み需要」の反動減だけではなく、マイカーを維持するための出費が膨らむことも大きな要因となるだろう。

 愛煙家がたばこの値上げを機に禁煙するケースはよくあるが、維持費の値上げラッシュで悲鳴を上げるマイカー保有者の中で、今回の消費増税を機に自動車を手放す傾向が強まることも懸念されている。
(文=松原高雄/経済ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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