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洞爺湖サミットの人気リゾートホテル、なぜ海運会社へ売却?バブル崩壊に翻弄された歴史

文=編集部

洞爺湖サミットの人気リゾートホテル、なぜ海運会社へ売却?バブル崩壊に翻弄された歴史の画像1ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ(「Wikipedia」より/663highland)
 警備サービス国内最大手セコムは、100%出資の子会社ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナルが運営するザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ(北海道虻田郡洞爺湖町)の土地・建物と保有株式のすべてを、明治海運に売却する。売却は6月末の予定で金額は非公開。ホテル名は変更せずに営業を継続し、従業員は引き続き雇用する。

 ザ・ウィンザーホテル洞爺は洞爺湖西の標高625メートルのポロモイ山の高台に立ち、洞爺湖を一望できる。地上11階、地下1階、高さ50メートル、客室数は386室で、宿泊料は1泊4万円前後からでスイートルームは10万円ほど。宿泊客は香港やシンガポールなどアジアの富裕層が多い。ゴルフ場のウィンザー・グレートピーク・オブ・トーヤや、スキー場のウィンザースノービレッジなどを併設し、スパ、プール、フィットネスクラブやテニスコートも備えている。総敷地面積は921万平方メートルで従業員は300人。道内屈指の大型高級リゾートホテルである。

 ホテルを取得する明治海運は自動車専用船、タンカーなどの外航船舶を持っており、2014年3月期の売上高は前期比22%増の280億円、最終利益は同2.4倍の13億円の見込み。商船三井が6.8%の発行済み株式を保有する大株主であるほか、三井グループ各社が出資する三井グループの海運会社だ。

 明治海運は近年、ホテル事業に力を入れてきた。昨年4月、旧有栖川宮別邸の「シーサイドホテル舞子ビラ神戸」(神戸市垂水区、247室)の建物を、第3セクター方式で運営していた神戸市から24億円で買収した。

 道内では洞爺湖に近いニセコ地区に、ニセコノーザンリゾート・アンヌプリ(後志管内ニセコ町)と稚内全日空ホテルの2つのホテルを所有。新千歳空港の近隣でもゴルフ場、早来カントリー倶楽部(胆振管内安平町)を運営しており、相乗効果が見込めるとしてザ・ウィンザーホテル洞爺の買収を決断した。

洞爺湖サミットで一躍有名に

 ザ・ウィンザーホテル洞爺といえば、08年7月に開催された第34回主要国首脳会議(サミット)のメイン会場になったことで知られる。洞爺湖サミットにはG8をはじめ、EU(欧州連合)、中国、インド、ブラジルなどの首脳が参加し、アフリカ諸国を含む計22カ国7連合が集まり開催された。それまでのサミットで、全参加国の首脳が同一のホテルに宿泊することはなかった。また、ひとつのホテルでサミットのすべての公式行事が行われたのも、この時が初めてだった。合計60回を超える2国間会議、レストランでの首脳の晩餐会から随行員の食事まで、すべてをつつがなくこなしたことが、同ホテルの評判を上げた。

 ちなみに同ホテルがサミット会場に選ばれた理由は、表向きは警備しやすいというものだが、当時の首相、安倍晋三氏の縁戚であるウシオ電機会長・牛尾治朗氏の働きかけがあったといわれている(サミット開催時の首相は福田康夫氏)。牛尾氏はホテルを保有するセコム創業者・飯田亮最高顧問(当時)と親しい間柄だった。サミット終了後は、宿泊客だけでなくレストランなどの施設を利用する客も増え、高い人気を誇っている。

同ホテルの歴史から透ける、バブル崩壊と戦後唯一の都銀破綻

 実は同ホテルには有為転変の歴史があり、経営が破綻した北海道拓殖銀行の乱脈融資により生まれた“バブルの殿堂”としても知られる。建設・不動産会社カブトデコムの子会社エイペックスが700億円を投じて1993年6月に開業した会員制の高級ホテル、エイペックス洞爺が前身である。イタリア産の大理石張りのロビーなど贅を尽くした建物は、バブルならではの産物といわれた。

 しかしバブルは崩壊し、同ホテルのオープンを境にして、巨額融資した拓銀とカブトデコムの関係が悪化。カブトデコムの創業者・佐藤茂氏の手形訴訟事件や拓銀幹部の背任問題などの不祥事が続出した。そして97年11月、バブル崩壊で多額の不良債権を抱えた拓銀が破綻、エイペックスも98年3月に自己破産を申請した。負債総額は949億円に上った。

 そんな中、同ホテルに救済の手を差し伸べたのがセコムだった。00年、セコムグループのセコム損害保険の子会社、十勝アーバンプロパティーズがホテルの土地・建物を60億円で購入し、施設を改装してザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパと名前を変え、02年6月に営業を再開した。

 拓銀破綻の要因となったカブトデコムは13年2月28日、札幌市内で臨時株主総会を開き、解散を決議した。負債総額は12年9月末で5060億円。業務は行わず、弁済するだけの会社として生き残ってきた。

 経営破綻した拓銀は98年11月に北洋銀行、中央信託銀行(現・三井住友信託銀行)へ事業を譲渡した。99年に法人を解散、06年に清算は終了した。都市銀行が戦後、経営破綻したのは拓銀だけである。北海道の企業の大半が拓銀と取引があったため、拓銀の破綻の影響は大きく、北海道経済が沈滞する原因となった。

 同ホテルを買収したセコムは、当初の目的であった地域支援の役割を十分に果たしたと判断して今回、明治海運への売却を決めたという。同ホテルは、明治海運の下で、新たな歴史を刻むことになる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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