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江川紹子の「事件ウオッチ」第3回

相次ぐ冤罪・不祥事への反省ナシ! 取り調べ「全事件」可視化を阻止する捜査当局の悪あがき

文=江川紹子/ジャーナリスト
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●捜査当局が固執する取調官の裁量権

 検察側によれば、裁判員裁判対象事件のほか、特捜部による独自捜査事件、被疑者が知的障害者・精神障害者である場合には、取り調べの録音・録画の試行を行っており、それを本格実施する、としている。つまり、検察側の裁量で行うので、義務化は勘弁してほしい、ということだ。

 かつての対応に比べれば、検察のそうした姿勢は前進と言ってよいだろう。しかし、東電OL事件や袴田事件など、多くの冤罪事件で検察が行ってきた証拠隠しなどを思い起こせば、そして、その証拠隠しを今なお検察が反省をしていない現実を考えれば、検察官の裁量に頼る制度は危険すぎて、とても賛同できない。

 本来は、すべての事件について、「任意」段階や参考人の取り調べも含めて、録音・録画を行うのを原則にすべきだろう。その原則は、最終的な提言の中で明記する必要がある。そのうえで、予算その他の事情ですぐに全事件を対象にできないならば、過渡的な措置として、現在可能な範囲で、できる限り対象事件を広げる努力をしてもらいたい。少なくとも、被疑者・弁護人が請求した場合は、捜査機関は録音・録画に応じる義務が生じる、という点は、盛り込まなければならない。

 また、捜査に関わる可能性のある警察官すべてにICレコーダーを配り、目撃証言などは捜査の当初から、録音記録を録り、メモと同じように、裁判が終わるまで保管することにすべきだ。

 冤罪を防ぐことは、事件の真相を解明するうえでも大切だ。特別部会は、その原点に立ち返って前向きな議論をやってもらいたい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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