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日本電産、“変わり続ける”経営で最高益 果敢な構造改革と連邦経営脱却で「1兆円」視野

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 KプロもMプロもボトムアップによるコスト削減運動のようなものなので、社員の理解と協力を得られやすいメリットがあるようだ。同社関係者は「KプロとMプロを現場で複合的に展開する過程で『どうして今まで利益を出せなかったのか』や『会社を強くするのは現場そのもの』という事実を社員が肌で感じるようになるのが大きい。2つの『プロ』は現場発のコスト削減策であると同時に、日本電産グループの最も実効的な社員教育になっている」と胸を張る。

●リーマンショックを契機に、収益構造改革を成功

 同社の売上高を過去10年間の推移で見ると、03年度から07年度まで順調に伸び、08・09年度にストンと落ち、翌10年度から緩やかな伸びを回復している。2年間の売り上げ減の原因は、08年9月に発生したリーマンショックだ。4月23日の決算説明会で、同社は03年度から07年度までを「第1次高度成長期」、08年度から12年度までを「事業ポートフォリオ転換準備期」、13年度以降を「第2次高度成長期」と位置付けている。換言すれば、リーマンショックを機に進めた抜本的な収益構造改革が、同社を強靭な会社に変えたのだ。

 では、リーマンショックで同社はどう変わったのか。

 永守社長は複数のメディア取材の中で、リーマンショックについて「あれはクラッシュ。言い換えると『地割れ』のような感覚だった」と振り返っており、当時の経営危機克服を次のように説明している。

 通常の不況は小波のように緩やかにやってくるし、エコノミストもさまざまな警戒シグナルを発信するから事前対策ができる。しかしリーマンショックは津波のように突然押し寄せてきた。それで「売り上げが急減し、計算すると毎月100億円の営業赤字。このままでは36年間やってきた会社が潰れる」(永守社長)との恐怖感に襲われたという。

「会社を潰せば社員を路頭に迷わせる。どうすればいいのか」。その責任感が「WPR」(ダブル・プロフィット・レシオ)という同社独自の緊急対策を着想させた。これは、生産性を2倍にし、損益分岐点を大幅に引き下げ、売上高半減でも営業黒字を出せる体質に変える。そうすれば、売上高がピーク時の75%まで回復すれば売上高営業利益率は10%に、売上高が100%回復すれば売上高営業利益率は20%になる。そのために今の2倍働こうという緊急対策だ。

 WPR実施と同時に、賃金カットに踏み切った。当時、役員の間には「今は非常事態。人員整理もやむなし」の声が高まっていた。だが、同社は創業以来人員整理をしたことがなかった。WPRも雇用を守るのが目的だった。だから役員の声は無視し、代わりに会社の危機感を労使で共有するチャンスに変えようと永守社長は考えた。そこで「人員整理はしない。だが賃金カットはする」と公式に発表した。賃金カットは09年2月から一般社員が最大5%(管理職社員は最大10%、役員は最大50%報酬カット)。一般社員と管理職社員の賃金カット分は、業績回復時のボーナスで補填するとの条件を付けた。

 その上で「1円でも効果が出る収益改善策やコスト削減策を発案せよ」と、グループ全社にハッパをかけた。すると、社員から5万件以上の業務改善提案が上がってきた。それらを1件ずつ精査し、実効性の認められる提案を次々と実行していった。例えば、DCモータは金型の内製化率を100%に引き上げた。磁気開発では設計段階で標準化を進め、約70%を共通化した。タイ工場では製造工程の再編・集約を行うと同時に、電気料金が割高な夕方の操業を休止した。

 こうした取り組みの結果は、すぐに現れた。08年3月期第4四半期は数百億円規模の営業赤字を覚悟していたところ、10億円の黒字を出し、通期では前年同期比31.7%減ながらも528億円の黒字を確保した。そして翌09年3月期通期では、売上高はピーク時の75%しか回復できなかったにもかかわらず、営業利益は過去最高の793億円を稼ぎ出した。09年12月のボーナス支給では、一般社員と管理職社員の賃金カット分に銀行利子の2倍分を上乗せして補填をした。

 このリーマンショック時の緊急対策が、会社に対する社員の求心力を強め、事業ポートフォリオの転換をスムーズにさせ、収益構造改革を成功させたのだ。

BusinessJournal編集部

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