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東京海上、なぜ首位陥落でも安泰?合併の副作用や内部混乱でもたつく損保他社を尻目に攻勢

文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト

東京海上、なぜ首位陥落でも安泰?合併の副作用や内部混乱でもたつく損保他社を尻目に攻勢の画像1東京海上日動火災保険本社(「Wikipedia」より/Wiiii)
 株高で好業績をたたき出している金融各社にとって、消費増税による景気減速が懸念されると思いきや、 2014年度は視界良好の1年となりそうだ。銀行業界、生命保険業界は市況の回復を受け「凪(なぎ)」状態だが、慌ただしい動きを見せるのが損害保険業界。損害保険ジャパンと日本興亜損害保険の9月の合併により、20年以上ぶりに東京海上日動火災保険が首位から陥落。国内首位争いは、三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険連合も交えて激化する。特に東京海上は保険金未払い問題も発覚して一転、窮地に立たされた格好だが、同社幹部や関係者は余裕の表情をのぞかせる。

「正直、上からの締め付けは厳しいですよ」。東京海上の関係者は、こう漏らす。損保業界では営業現場にゲキが飛ぶのは珍しいことではないものの、首位陥落が決定的となった今、その激しさはかつてないほどだという。同氏は、「新聞や雑誌のインタビューで社長や幹部は『規模にこだわらない。重要なのは利益』と言っていますが、とんでもない。社内では首位奪還への大号令がかかっていますよ」と打ち明ける。

 こうした強引な方針には社内の反発も少なくない。年明けに10年以上前の保険金未払い問題を読売新聞に報じられたが、この発端は「現状に不満を持つ社員が新聞社に内部資料を持ち込んだ」(東京海上関係者)という社内からのリークだったという。読売新聞の大阪版にはその社内資料が写真入りで掲載されており、社内の混乱を露呈する格好となった。

火種抱える損保ジャパンと日本興亜の合併

 ただ、保険業界に詳しい証券アナリストは「未払い問題は痛手ではあるが、それでも明らかに今の状況は東京海上が有利」と語る。

 損保ジャパンと日本興亜の合併会社は規模でこそ首位に躍り出るが、合併につきまとう火種を抱える。日本興亜の社員は、内情を次のように語る。

「当社と損保ジャパンでは規模が違いすぎる。合併に先立つ早期退職は予定よりも多く集まりましたが、当社の社員が殺到したため。残った社員も、損保ジャパンの社員と役職は同列でも、重要な顧客からは外されているケースが目立つ。会社に残っても将来はないと完全に士気が失われていて、これからも退職者は増えるだろう」

 合併に際しては、最大の懸念であるシステム統合も控える。「万全を期しても、必ず不具合は生じる。商品もすぐに一本化はできない。システムが安定するまでは3年はかかる」と業界関係者は見ている。

社内混乱の三井住友・あいおいニッセイ同和連合

 実際、こうしたシステム上の問題を避けるために、損保三強の一角である三井住友はあいおいニッセイ同和との合併を避け、「機能別再編」を選択したほど。「聞き慣れない言葉かもしれないが、非競争領域はどちらか競争力があるほうに片寄せしようという考え」(三井住友社員)。システム統合にかかるリスクやコストを最小限に抑えて、段階的な合併を視野に入れる。

 機能別再編は合併の混乱を避けられるが、課題もある。東京海上の社員は「両社は経営上、提携関係にあるが、現場の営業担当者には関係ない話。あくまでも別会社なので、提携領域以外は真剣にぶつかり合い、つぶし合っている。当社としてはありがたい。合併したほうが脅威だった」と胸をなで下ろす。

 加えてここにきて騒がれ始めたのが、三井住友社内でのパワハラ騒動。同社は01年に旧三井海上火災保険と旧住友海上火災保険が合併して誕生してできた経緯から、いまだに旧三井派と旧住友派の対立が社内でくすぶる。住友派の営業課長が三井派の上司と部下からの圧力に挟まれ、自殺に追い込まれたとの内部告発文が昨秋、マスコミ各社に寄せられた。今後の展開次第では、あいおいニッセイ同和との再編に影を落とす可能性もある。

 未払い問題をきっかけに東京海上の切り崩しを狙った競合他社だが、意外にも自社の足元は不安定。「業界の雄」の座を明け渡すかに見えた東京海上だが、他社が合併作業に苦戦する中、10年先行して旧東京海上火災保険と旧日動火災海上保険の合併を遂げたメリットは大きい。保険料収入でこそ抜かれるものの、真のリーディングカンパニーとしての座は安泰だろうとの見方が、ここにきて広まっている。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

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