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江川紹子の「事件ウオッチ」第4回

【PC遠隔操作】我々が完全に騙された片山被告の“巧妙なウソ”の手口と、事件解明のカギ

江川紹子/ジャーナリスト
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 そもそも、片山被告が事実を認める気になったのは、「悪い」と思ったからではなく、“真犯人メール”を送ったスマートフォンが見つかり、自分の指紋やDNAが検出されて、逃れきれないと観念したからだ。彼が2005年、掲示板への殺害予告などで罪に問われた時も、最初は否認していたが、動かぬ証拠を突きつけられて、全面的に罪を認めた。

 片山被告自身、外から見える「白い自分」と、内側にある「黒い自分」がまったく別人格のように同居している自分の状態には気がついている、という。だからといって、格別それに苦しんできたわけでもないものの、そんな自分が立ち直れる自信もなさそうだ。

 保釈後、インタビューや記者会見などで彼を見ていて、違和感を覚えたのは感情表現の乏しさだった。保釈された時も、その喜びの表現は控えめだった。抑制的なのかなと思ったが、今になって考えると、むしろ感情自体が乏しいような気がする。本当の気持ちを述べようにも、何が自分の本当の気持ちなのかも、彼は分からない状況なのではないか。

 そういう彼の内面に光を当てていかないと、なぜ彼が事件を起こし、人を欺き、稚拙で愚かな“真犯人メール”の工作まで行うに至ったのか、その全体像は解明できない。彼は有罪判決を受けて服役することになるだろうが、いずれは社会に戻ってくる。心の問題が解決しないままでは、社会にうまく馴染めず、また問題を引き起こす可能性もある。多少の時間がかかったとしても、彼が今回のような愚かな行為をせず、無罪を主張し続けていたことを考えれば、有益なことに時間をかけるのは無駄ではない。発達障害も含めた心理、もしくは精神医学の専門家の助けを借りて、彼の心の状態を明らかにしていくことが必要だと思う。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。元厚労省局長・村木厚子さんの『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』では取材・構成を担当。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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