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“匠”の技術を持つ養殖業、世界進出を妨げる3つの壁 ノルウェーとの比較検証

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“匠”の技術を持つ養殖業、世界進出を妨げる3つの壁 ノルウェーとの比較検証の画像1「Thinkstock」より
 意外と知られていないのですが、日本の養殖業には非常に大きな可能性があります。他の1次産業の生産物と異なり、関税率はほとんどが3.5%と実質自由化されていながら現在の規模を維持しているということは、養殖業はすでにグローバルな競争力を持っているともいえます。特に品質に関しては「匠」の世界に達しており、これは海外の追従を許さないレベルにあります。また、種苗生産技術に関しては明らかに世界トップであり、すでに輸出も始まっています。例えば、昨年のブリ類の輸出量はフィレだけでも約6500トンに達しています。養殖業が地域経済を支える大きな産業になっていく可能性を持っており、日本の養殖業が世界市場を獲りにいくことは、最も簡単に日本経済を地域から根本的に改善できる方法といえるでしょう。

 しかし海外はもっと先を進んでいます。そこには「海外の新規市場を獲得する能力の差」が存在しています。例えば、日本からEUへのブリ類輸出は500トン程度ということで、ある団体は多額の予算を持っていても、「そんな小さな市場を獲りにいってどうするのか」というようなコメントをしています。確かに「既存」市場は500トン程度ですが、そこには「なぜ500トンにとどまっているのか」という分析はなく、その状況をどのような方法によって変えることができるのか、という戦略もありません。これでは海外勢と勝負になりません。世界のサーモン市場を支配しているのはノルウェーですが、その司令塔であるNSC(ノルウェー水産物審議会)の水準から見ると、残念ながら子供と大人くらいの力量の差が存在します。

 NSCの場合、獲得を目指す市場を徹底的に分析します。実際に世界中の現場に入りヒアリングしつつ、アンケートをしたり統計処理(計量経済分析)をしてみたり、ありとあらゆる最新のマーケティング手法を用いて分析し、その結果得られた「改善点」を改善して、さらに自ら商談につながる機会をしかけて市場を切り開いていきます。つまり、マーケティング戦略に根本的な違いがあるのです。彼らはそうやって、この十数年の間に、サーモンの輸出量を0から137万トンにまで伸ばしたのです。

●ジェネリックマーケティングの必要性

 日本の場合は残念ながら今のところ、前述した団体の姿勢に見られるように、個別の企業にだけリスクをとらせるかたちになってしまっています。つまり、世界市場獲得をバックアップすべき組織が、最初からそれをやるつもりがない、表向きは「やる」といいながら「やらない」のです。そういった人々には、本来は業界の未来を背負って取り組むべき、商品カテゴリ全体の需要を上げるために行うマーケティング、いわゆるジェネリックマーケティングをお任せすることはできません。リスクを背負うという意思がないので、養殖会社や水産加工会社と命運を共にする覚悟は生まれようがありません。

 それに対して、ノルウェーの場合は自国にそもそも市場がないので、「やらない」という選択肢がありません。常に「どうやったら世界市場を得られるか」という問いへの答えを求めることになります。それゆえ、担当者は必死になって競争し、本物の情報を集め、最新のマーケティング手法を駆使し、「正しい答え」に到達するのです。担当者に強いマーケティング・インセンティブが存在し、情報戦で確実に勝ちを取りにいくのです。

BusinessJournal編集部

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