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有名タレント起用という「諸刃の剣」、商圏外での放送…“大胆”CM戦略はなぜ成功?

文=鷹野義昭/CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター

●タレント起用が起爆剤に

 実は、現在のエポスカードの認知率は首都圏のターゲットベースで50%以上(テムズ調べ)。つまり、およそ2人に1人が知っている状況ですが、ここ数年の認知率は伸び悩んでいました。

 マーケティング指標が硬直化した中、大きく舵を切り替える瞬間に有名タレントを起用することが起爆材となり得るのです。

 エポスカードのスリーピングユーザーに、存在を思い出してもらい、使ってもらうこと。そのためには、有名タレントの起用で大きなインパクトを与え、リマインド効果を獲得することが非常に有効なのです。

 また、エポスカードは確たるイメージがいまだ構築されていない段階ということも重要なポイントです。

 タレントパワーに乗り、タレントの持つ好イメージを商品やサービスに転化することが、真っ白なキャンパスに絵を描いていくように容易な状況といえましょう。

 一方、有名タレントを起用したCMは目がタレントに行ってしまいがちで、商品の機能の訴求や、視聴者の理解を深めるといった点では、むしろタレントの存在がノイズになってしまう場合さえあります。一般的に、機能訴求を中心とした家庭用品でノンタレントCMが多いのも、そういったことが理由なのです。

 自社商品の認知浸透のステージ、広告でブレークスルーしたい目標、求めるブランドイメージの方向性、タレント起用に当たっては、まずはこうした「己」を冷静に判断することが肝要です。つまり、「タレントありき」ではなく、広告目標を達成するためのCM表現のひとつの方法・構成要素として考えることが確実な効果へとつながっていくのです。

 エポスカードの今後の展開としては、「どこでも使えるお得なカード」としてのサービス内容の訴求も、CM以外のさまざまな媒体を活用し付加していくことになるでしょう。

 そのためには、イメージや認知の状況、さらには外部利用の理解度をマーケティングリサーチで把握することが重要です。そして、早計に起用タレントを替えることなく、クリエイティブのトーン&マナーで微調整するタイミングの「見極め」と「さじ加減」がポイントとなってくると考えます。

 安易にタレントを起用していると思えるCMも多く見受けられるなか、エポスカードの勇気を持った見事なクリエイティブ戦略といえます。今後の広告展開についても注目していきたいところです。

鷹野義昭

鷹野義昭

株式会社テムズ代表取締役<CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター>
1963年、長野県生まれ。大手広告代理店を経て、90年より現職。テレビCMを中心としたマーケティング戦略立案に携わり25年以上。1000素材を超すテレビCMの戦略策定・分析・広告効果測定の実績を持つ。
主な著書に『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎 ‐明日からテレビCMがもっと面白くなるマーケティング入門‐』(ビジネス社)などがある。近年では、秀逸なローカルCM・地方PR」動画を集めたサイト「ぐろ~かるCM研究所」の所長を務める。

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