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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第78回<終>

腐敗が進む巨大新聞社、失われるジャーナリズム、堕落する社員、政府と癒着…

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 深井の自宅に吉須からの手紙が届いたのは3日後の土曜日、8月27日だった。突然の電話があってから1週間経っていた。

 郵便はいつも午後4時前後にマンション1階の郵便受けに届く。その日も、曇天で、少々蒸し暑かったが、猛暑は去っていた。手紙のことが気になっていた深井は午後4時半前、散歩に出た。出がけに郵便受けをみると、一通の封書があった。やはり吉須からだった。定番の散歩コースを選べば、河原に向かうのだが、この日は河原と反対方向に歩き出した。徒歩10分ほどの距離にある公園を目指した。

 公園に着くと、ベンチに座って封書を開け、手紙を読み出した。手紙は吉須らしくもなく、少し丁寧、ちょっぴり諧謔ぽい調子で語りかけるように書かれていた。

≪深井(宣光)さん、あなたにはちゃんと説明しなくて、申し訳なかった、と思っています。でも、一緒に食事をしたり、呑んだりした時の会話で、薄々、わかってくれていたんじゃないか、と期待しているんですよ。だって、あなたは大都で“ピカ一”のスクープ記者としてその名が轟いていましたからね。冗談はさておき、太郎丸(嘉一)会長の仕組んだ、今度の暴露作戦、僕は会長と全く正反対の狙いで“協力”したんです。それが正真正銘、僕の本心なんです。≫

≪会長は堕落の右代表のような大都の松野弥介と、日亜の村尾倫郎の二人を追放すれば、ジャーナリズムの劣化に歯止めをかけられると思い込んでいますが、そんなことはできないというのが僕の認識なんです。日本の大手新聞のように巨大になってしまうと、どんどんジャーナリズム精神は失われるんです。いわば、企業としての巨大化と反比例に関係にあり、大新聞は社会の木鐸でも、ジャーナリズムでもない、収益だけを追い求める株式会社に過ぎない―。世間にそう周知させたい、そう思っているんです。≫

≪多分、あなたも、そこはかとなく僕の思いを感じて居たんではないですか。もっとはっきり言えば、僕はこの世から新聞社を葬り去りたいんです。もちろん、そんなことは自分の生きている間にできこっないし、ある意味で、妄想みたいなものでしょう。だから、僕はできるだけ早くこの業界と縁を切りたかった。でも、その前に“最後っ屁”くらいはしてやりたかったんですよ。それが今度の暴露作戦です。最後にあなたと飲んだ時、一応、僕は話しているんですよ。もっとも、あの時はまだ最後の腹が固まっていなかったんで、あいまいにお茶を濁すように受け答えするようにしていましたから、あなたは真に受けなかったかもしれませんが…。≫

≪なぜ、“最後っ屁”なのか、この点はあなたにもわからないかも知れません。少し説明しましょう。会長と三人で打ち合わせした時、写真週刊誌「深層キャッチ」がスクープ記事を載せれば、大都も日亜も名誉毀損で裁判を起こし、多分、その裁判では週刊誌側は敗訴すると、会長にかみつきましたよね。それは僕の見立てであると同時に、期待も込められていたんです。週刊誌サイドが敗訴してほしいと。“する”じゃなくて“ほしい”のはなんせ、裁判、特に民事裁判は裁判官次第のところがありますから。≫

≪そうは言っても、僕は自分の見立てにかなり自信があります。大相撲の八百長事件だって、事件発覚前に載った週刊誌の疑惑報道は週刊誌側が敗訴していますかね。もし、「深層キャッチ」に勝機があるとすれば、黒幕の太郎丸会長が自ら表に出ることでしょう。証人尋問まで必要とは思いませんが、陳述書を出すくらいのことはしないと駄目でしょう。しかし、仮に、会長がその気になっても、三杯守泰社長ら、国民新聞の経営陣が“殿、ご乱心”と羽交い絞めにしてでも押し留めるでしょう。≫

≪そんなわけですから、僕の見込み通りになる可能性が濃厚なのです。しかも、僕の狙いからすると、おまけのような“成果”もありました。この間の電話で教えましたが、村尾の愛人記者、芳岡由利菜も訴えたことですよ。この話、僕は「深層キャッチ」の発行元の東亜文芸社の書籍編集部の編集者から聞いたんです。いくら伏せても、裁判を起こせば、当然、相手の被告には書面がいくし、公判が始まれば、書面も閲覧できます。いずれ、日亜社内でも広まります。≫

BusinessJournal編集部

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