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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第17回

芸能プロ社長、タレント脅迫裁判で慰謝料命令 「君は人生破滅。あらゆる手段使う」

文=佐々木奎一/ジャーナリスト
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 二審で八木氏は新たな証拠を提出した。それは山本の「友人閲覧用非公開ツイッター」で、姉妹や従姉妹、女友達など計15人のみ閲覧ツイートができるというもの。期間は八木氏が違約金を求める恫喝を始めた頃から裁判が始まる頃までで、A4用紙に全45ページにわたるツイートが印刷してある。どのようにしてプライベートなツイッターの内容を入手したのかは不明だ。

 そのツイートには、病院から不安障害の診断書を受け取った時期に、山本が婚約者と飲んで話し合っていたり、友達と忘年会をしたりしている文面があった。また、12年1月1日時点で、「仕事をもう辞める」と宣言したり、診断書を受け取る3日前に、「仕事はしたくないから、行かなくても済むように精神科で診断書をもらうことになった」という趣旨のツイートをしたりしていたことから、八木氏側は、「診断書は信用できない」「山本は仮病を使っており、契約違反なので2000万円支払え」という主張をした。

 二審判決は14年5月7日に下った。判決では、ツイートの内容から山本は12年1月にはタレント活動を辞めることを決意していることが認められるとして、診断書はタレント業務を行わなくて済むようにするために取得したものと認められる、と判断。

 山本は、友人たちに過度の心配をかけないよう、冗談めかした言葉や強気に見せかけたと主張したが、そうだとしても、友人たちに診断書を取得することを明らかにしつつ、その目的を偽る必要性があったとは認めることができない、とした。

 さらに、八木氏の言動に対して、山本が強い不快感を持っていることが認められるが、このことによってタレント活動の遂行が不可能であったとまでは認められないし、八木氏以外のマネージャーの下でタレント活動をする余地もあったこともうかがえる。

 そうすると、山本の上記の主張を考慮しても、山本が不安障害により業務を遂行することが不可能となっていたと認めることはできない、というべきであるとし、タレント活動を行わなかったことは契約違反、と断じた。これにより、原審で不安障害を理由に未払い賃金と認定した120万円については取り消した。

 その一方、前述のように八木氏の計2000万円の請求については、「損害を被ったと認めるに足りる証拠はない」として却下した。

 そして、八木氏が山本に対し、「君が必要だ」「山本を失うのは耐えられない」「別れられる男はいない」「人生ぐちゃぐちゃになるよ」などとメールや直接口頭で精神的に苦しめたことについては、原審を踏襲し「不適切であり違法」と断定し、慰謝料25万円など33万円の支払いを命じた(東京高裁第1民事部:福田剛久裁判長)。

 このように事件の肝の部分は変わらない判断となった。

 さらに八木氏は最高裁判所に上告し、現在係属中である。

(文=佐々木奎一)

※なお、本事件の詳細については、ニュースサイト「My News Japan」の14年4月11日付記事『芸能プロ社長が所属タレントにストーカー行為、婚約者と別れるか違約金5千万円払えと迫り敗訴』をご参照ください。

佐々木奎一/ジャーナリスト

佐々木奎一/ジャーナリスト

「My News Japan」を中心に、「別冊宝島」や「SAPIO」「週刊ポスト」などで執筆するジャーナリスト。企業のパワハラや不当解雇などの労働問題を中心に、政治家の利権や原発問題に絡むメディアの問題なども取材をする。これまでに、「キユーピー」のパワハラ問題の追及や大企業の障害者雇用に関する問題提起、バンダイナムコの社員うつ病問題などを追及して話題となっている。

Twitter:@journalist_ssk

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