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痩せ細るケンウッド、売り上げ6割減、なぜ悲観論広がる?戦略なきリストラの代償

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 東芝で社長に上り詰める夢をあきらめ、米投資ファンドに転じて「米国流合理主義経営を学んだ」という河原氏は、「成熟市場ではM&Aなどでプレーヤーを減らさなければ成長できない。市場でトッププレーヤーになれば、存在感が増し、売り上げも収益も増進する」(12年10月、経済産業研究所主催の講演より)が持論。旧ビクターとの経営統合はその実践だった。河原氏は02年に経営再建中だった旧ケンウッド社長に就任し、債務超過を解消するため社員の3分の1を人員整理する大胆なリストラで、就任後1年で黒字回復を行い、「再建請負人」として一躍脚光を浴びた。だが、黒字回復後の成長戦略は描けず、その矢先に浮上してきたのが旧ビクターとの経営統合だった。持論を実践する好機だった。

 河原氏が特に興味をそそられたのが、カーナビ事業だった。音響・無線技術に強い旧ケンウッドと、映像技術に強い旧ビクターが一緒になれば、間違いなくカーナビのトッププレーヤーになれると確信した。そして実際、統合後のカーナビ事業はケンウッドの売上高の37%(14年3月期)を占める主力事業になり、欧米市場ではトップシェアも獲得した。だがその一方で、経営資源が急速に痩せ細っていった。

●旧ビクターに吹き荒れるリストラの嵐

 それは11年10月3日、午後のことだった。経営統合から丸3年。横浜市内のホテルの大会議室では、前月に発表した中期経営計画の社員向け説明会が行われていた。同社関係者は「その時、河原会長は最後に『We are the Kenwood』と叫び、中計の全体説明を終えた。しかし、私は会場の後ろに座っていたので『JVC』を聞き逃したのだろうと思っていた。ところが、河原会長に続いて個別説明を行った役員も、説明の結びで『We are the Kenwood』と叫んだため、今度は会場のあちこちで失笑が漏れた」と振り返る。
経営統合後の旧ビクターの立場を象徴するようなエピソードだった。

 統合後の旧ビクター出身社員を待ち受けていたのは、苛烈なリストラだった。統合3カ月後には同社員480人の人員整理を発表。以降、旧ビクターが東京・新橋に所有していたオフィスビルの売却、八王子工場の売却、創業の地である横浜の本社工場の売却など、旧ビクター側にとってリストラの嵐が吹き荒れた。

 役員クラスも安泰ではなかった。統合から半年後、河原氏のリストラに抵抗していたケンウッド社長の佐藤国彦氏(旧ビクター社長)が退任させられたのを機に、他の旧ビクター出身役員もさまざまな理由でケンウッドから去っていった。その結果、現在の経営陣は旧ケンウッド出身者と、河原会長が外部から招聘した役員とで構成されている。

 加えて、河原氏が「これが最後」とした10年11月の人員整理では、旧ビクター出身の管理職社員145人が退職した。さらに11年3月になると、勤続5年以上の旧ビクター出身社員が人員整理の対象になり、738人が退職した。このうち、約500人が生え抜きの優秀な技術者だったといわれる。

 こうした果断なリストラの結果、経営統合から3年後の11年10月、「完全統合会社」となった年度の12年3月期決算は、売上高が3209億円となり、わずか3年で業容は38%に縮んでいた。それが14年3月期決算でさらに縮んだ。

●成長戦略を覆う、先行き不透明感

 カーナビ業界関係者は、同期決算の赤字要因を「業績の足を大きく引っ張ったのが大黒柱のカーナビ事業。国内市場でこそ市販向けのAV一体型カーナビ『彩速ナビ』が売れたが、海外市場では市販向けもOEM向けも振るわなかった。スマートフォン(スマホ)向けのカーナビアプリが高機能化し、カーナビ専用機の市場が縮小傾向にある。これに対し、なんら有効な対策を打てなかったのは致命傷」と分析する。ちなみに、カー用品大手・オートバックスセブンでも、カーナビの既存店売上高は昨年11月まで20カ月連続で前年同月割れとなり、13年度累計では前年度比23%減と、売上減少に歯止めがかからない状況だ。

 急速にスマホに追い込まれた市販カーナビ事業の代替として、ケンウッドはカーナビのOEMや北米・中国市場の業務用無線などBtoB事業へのシフトを急ぎ、14年3月期に46%だった比率を、15年3月期は50%に引き上げる計画を立てている。だが「北米の業務用無線市場はモトローラの牙城。これから攻勢をかけて壁を崩すのは容易でない」(同関係者)ため、BtoB事業シフトも先行き不透明といえる。

 同社は14年3月期決算説明会で、事業基盤再構築の柱として、「カーエレクトロニクスと先進車両技術」「ブロードバンドマルチメディアシステム」「次世代カメラ」などの「次世代事業を軸とした成長戦略」を発表している。別の業界関係者は「この成長戦略が仮に正しいとしても、これから一本立ちするまで数年はかかる。その間は稼げる事業もなく、業容が縮小の一方」と心配する。

 さらに株式市場関係者の間でも「次世代事業の育成に時間がかかるのはビジネスの常識。そんな悠長なことを言っている間に、トッププレーヤーどころか自身が業界再編の的にされる」との見方が広がる中、ケンウッドは今、待ったなしの構造改革を求められている。
(文=福井晋/フリーライター)

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