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西武の再上場で敗北のサーベラス、注目集まる次の一手は?西武関係者に広がる危惧

文=福井晋/フリーライター
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 西武はサーベラスの支援を受け入れる際、サーベラスの持ち株比率を3分の1未満に抑える代わりに、西武への経営関与を一部認める条項を盛り込んだ資本提携契約を締結していた。これが上場審査のネックになった。東証の上場審査は「特定株主に有利な契約は申請前に解消されていること」が条件になっているからだ。しかしサーベラスは同意しなかった。逆に「こんな不当な理由により東証への上場申請を進めるのであれば、当社はいかなる法的措置も辞さない」との書簡を10月23日付で送った。それは、サーベラスはそれまでの友好的なパートナーの仮面を剥ぎ棄てた瞬間でもあった。

●サーベラスの豹変

 サーベラスの反発で、西武の再上場は暗礁に乗り上げた。上場要求から上場反対へ、サーベラスはなぜ豹変したのだろうか。

 西武関係者は「実は10月23日付書簡の前に、私信を装った『ファインバーグ書簡』が当社の後藤宛に10月12日付で送られていた」と打ち明ける。その中で「当社が西武の上場想定株価を算定したところ、4月は1株1600~2300円だったが、10月は1100~1500円に大幅ダウンしていると述べ、後藤を非難していた」という。

 一般に米投資会社が求めるリターンは年率10%以上。この基準でゆくと、サーベラスが出資した時の株式取得価格は1株当たり919円。同社が要求している「12年中」の再上場なら出資から約7年なので、目標リターン率は70%以上、すなわち919円の1.7倍以上。したがって4月の想定株価なら1.74~2.5倍のリターンを取れる。証券関係者は「それで出口戦略発動の頃合いと再上場を要求したが、10月の想定株価では1.20~1.63倍。これでは安過ぎてとても発動できないと、急遽再上場ストップをかけたのだろう」と推測する。

 そこで、サーベラスが取った行動が「株価吊り上げ」だった。西武関係者によると、サーベラスは西武に「経営改善の促進・拡充」と称する47項目のリストラを要求した。前出の10月12日付書簡では、47項目のリストラを実施すれば「12~18カ月以内に営業利益で約80億円、EBITD(利払い・税金・償却前利益)で約180億円の収益改善ができる」と述べていたという。47項目の中には、のちに社会問題になった西武秩父線など5路線の廃線とプロ野球球団・西武ライオンズの売却も含まれていた。

 この理不尽さに西武は反発した。「当社の要求だから当然呑むだろう」と考えていたサーベラスの誤算は、西武のトップが大株主におもねらない後藤社長だったことだ。後藤社長は「総会屋利益供与事件」を引き起こした旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)の改革に奔走した「四人衆」の筆頭格。再建請負人として西武に転じた後は、この事件を教訓に公正な経営に腐心し、再上場に当たっては透明性にこだわった。

「後藤・ファインバーグ会談」で「株価は市場が決めるもの」と啖呵を切ったのも当然だった。

●「後藤外し」のために仕掛けたTOB

 西武の反発に驚いたサーベラスが、次に取った行動が「後藤外し」だった。その手段が市場関係者の耳目を集めたTOB(株式公開買付け)だった。

 年が明けて13年3月11日、サーベラスは西武株を追加取得するため、1株1400円でTOBを行うと突如発表。TOB期間は3月12日から4月23日、TOBによる取得株比率の上限は4%。サーベラスは西武株の32.44%をすでに保有しているが、「株主総会の特別決議で拒否権行使ができるようにするため、持ち株比率36.44%までの引き上げを目指す」というのがTOBを仕掛けた表の理由だった。

 同時にサーベラスは6月、西武定時株主総会で、元金融庁長官の五味廣文氏ら3名を取締役として推薦する方針も発表したが、これが裏の理由だった。すなわち「TOBで株主総会特別決議拒否権を行使できる持ち株比率を獲得した上で、後藤社長を退任させ、傀儡となる五味氏を社長に就け、自社主導の出口戦略を発動する。これがサーベラスの描いたTOBシナリオ」(証券アナリスト)というわけだ。

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