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バーバリー、三陽と契約解除の舞台裏 相次ぐ海外ブランドの一方的解除でアパレル業界岐路

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 これについては、業界内でも「欧州のラグジュアリーブランドを、日本でアパレルの大衆ブランドに転化し、普及させた三陽商会の功績は大きい」と評価する声が多い。したがって、「三陽商会もこの実績を背景に、バーバリーに捨てられることはないと過信していたふしがある」(業界関係者)という。

●5年前から予想されていた契約終了

「三陽商会とバーバリーの契約は間もなく終了する」と業界内で噂され始めたのは、5年前の09年頃からだった。99年に更新した00年から20年までの契約期間が、09年にバーバリーの要求で15年までと、5年間短縮されたのが発端だった。三陽商会は当時、この情報を「事実無根」と否定していた。

 ところが、その後の経緯は噂通りの進展を見せた。情報が出始めた09年9月、バーバリーは東京・表参道に「直営路面第一号店」を開業。その後も都内を中心に仙台、名古屋、京都、大阪で「直営路面店」を次々と開業し、14年5月20日現在、14店を展開。今後も出店拡大を明らかにしている。

 また、「バーバリー子供服」も12年秋冬シーズン限りで三陽商会のライセンス生産は打ち切りとなり、以降はバーバリーが生産した子供服が国内で販売されている。したがって、今回の契約終了も「三陽商会は、ついに観念して発表したか」(業界関係者)程度の反応で、業界内に驚きの声はなかった。

 バーバリーの13年版アニュアルレポートによれば、世界のライセンス契約収入1億900万ポンド(約185億円)のうち、60%強を日本のライセンス契約料が占めている。だが、同社連結売上高20億ポンド(約3400億円)からすると、日本のそれはたった3%強でしかない。日本市場にバーバリーブランドが浸透、需要が顕在化した今、ライセンス供与はやめて、自社製品を直接販売したほうが得と考えるのは当然といえる。

 また、「ブルー」「ブラック」の両レーベルが日本では欧州の半額程度の安値で売られていることに対し、バーバリー社内ではかねてより「バーバリーのブランド価値を損ねる」と不満が強く、三陽商会との契約継続に消極的な意見の役員が多かった。09年の契約期間短縮要求時に、バーバリーのこうした空気を三陽商会が察知できなかったことも、契約更新ができなかった一因とみられている。

●相次ぐ、海外ブランドからの一方的なライセンス供与契約解除

 アパレル業界では、ライセンス供与側の都合で契約を打ち切られるのは珍しいことではない。例えば、スポーツウェアメーカー大手のデサントは98年、アディダスから28年続いたライセンス契約を一方的に打ち切られている。当時のデサントは売り上げの40%強、営業利益の半分近くを、アディダスのライセンス製品が占めていた。この影響で、同社は01年から3期連続の営業赤字に陥っている。

 以降も、05年にアニエスベーがサザビーリーグとの契約打ち切り、07年にラルフローレンがオンワード樫山との契約打ち切り、09年にダナ・キャランが米ワコールとの契約を打ち切るなど、相次いでいる。そして、ライセンス供与側の多くがその後、日本市場で直接販売を始めている。

 アパレルメーカーにとって、欧米ブランドのライセンス契約は「安直に儲けられる、おいしいビジネス」(業界関係者)といわれている。売上高の10%程度のライセンス料を払うだけで、自社開発のアパレルを欧米の有名ブランド名で販売できるからだ。自社開発品にそのブランドマークを付けるだけで、高値で売れる。マークの有無で利幅がまるで違ってくる。

 かつてはライセンス供与側も好都合だった。アパレル製品は国ごとに季節感、嗜好、品質評価尺度などが異なるため、世界共通のブランド製品をつくるのが困難とされていたからだ。したがって、進出国のアパレルメーカーにライセンス供与をすることで、自社ブランドの浸透を図っていた。

 だが、進出国で自社ブランドが定着すると、ライセンス供与のメリットは薄れる。そこにおいしい市場が顕在化しているのに、10%程度のライセンス料収入では旨味がないからだ。また、ラグジュアリーブランドメーカーの場合、自社ブランド名のついた製品の安売りを許しておくと、ブランド価値を損なう恐れもある。

 さらに、インターネット通販の普及などで「現地化されていない『真正ブランド品』の需要が世界的に増加している今日、ライセンス供与の必要性は薄れ、世界的な需要に迅速・柔軟に対応するために自社ブランドを直接コントロールする重要性が高まっている」(業界関係者)。

BusinessJournal編集部

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