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医療費削減狙う規制改革に「岩盤」 健康食品とサプリ、世界に遅れる規制緩和と経済的損失

文=井上久男/ジャーナリスト
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医療費削減狙う規制改革に「岩盤」 健康食品とサプリ、世界に遅れる規制緩和と経済的損失の画像16月13日、規制改革会議で発言する安倍首相(「首相官邸 HP」より)
 本題に入る前に筆者の基本的な考えを述べると、安倍政権の集団的自衛権の行使容認に向けた動きには反対だが、いわゆるアベノミクスの「第三の矢」と呼ばれる成長戦略における規制改革、例えば農協改革や医療改革については概ね賛成だ。

 特に産業活動において「新陳代謝」が緩やかな日本においては、規制改革によって既得権を打破していかなければ、能力とやる気のある新興勢力が新規参入できず、健全な競争にも促されずに、産業活動が次第に停滞していく。その結果、消費者は価格が高いうえに、サービスや商品の中身はたいしたことのないものを買わされる羽目になる。最終的なツケは消費者が払うことになる。

 ただ、「新陳代謝」のプロセスでは、さまざまな問題が起こることも十分にあり得る。例えば、規制改革によって混合診療が認められることにより、先進的な医療行為を受けた患者が、想定外の副作用で苦しむこともあるかもしれない。しかし、これは誤解を恐れずに言えば、社会が大きく変化していく際にはどこかで支払わなければならない「代償」ではないか。当然ながら起こり得るリスクを想定してそれを排除する努力は重要だが、そこばかりに注力していれば、「石橋を叩きすぎて渡らない」といったことになりかねないだろう。

 規制改革を進めていくためには、官庁が事前に利害関係者と調整して細かいルールをつくることよりも、大きな方向性を決めて自由に参入を促し、参入後に法律違反や倫理上の問題などがあれば厳しく罰したり、業界から追放したりする「事後監視型社会」への変貌が求められる。健全な自己責任型の社会への変貌が必要だともいえるだろう。そうでなければ大胆なイノベーションも起こらない。しかし、日本は「お上頼み」の国柄であり、国がつくった規制で守られることを国民が好む傾向にあるのではないか。こうした意識も変えていかなければ、大胆な規制緩和はできないだろう。

●厚労省、医師会、製薬業界の癒着か

 冒頭にも述べたように規制改革は安倍政権の重要な経済政策のひとつだが、筆者が取材をしている分野では、昨年提示された規制改革の方向性が大きく後退している。それは、健康食品サプリメントの機能性表示に関する規制改革でみられる。いったんは掲げられた規制改革の狙いや、現在に至って潰されそうになるまでの流れを以下に説明していく。

 安倍晋三首相は昨年6月5日、「成長戦略第三弾」と題する内外情勢調査会での講演の冒頭で次のように語った。

「健康食品の機能性表示を解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには的確な情報が提供されなければならない。当然のことです。現在は、国から『トクホ』の認定を受けなければ『強い骨をつくる』といった効果を商品に記載できません。お金も時間もかかります。とりわけ中小企業・小規模事業者にはチャンスが事実上閉ざされていると言ってもいいでしょう」

 安倍首相の発言を補足説明すれば、日本ではこれまで「血圧が気になる方へ」といったような機能性表示は、国から認可を受けた特定保健用食品(トクホ)や栄養機能性食品にのみ許されてきたが、健康食品やサプリでも科学的なエビデンスがあるものには、機能性表示を認めるというものである。直後の6月14日には健康食品やサプリの表示規制の緩和を実施することを閣議決定した。

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