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広木隆「僕にも言わせろ~真説 経済のミカタ」(6月25日)

ロボット、少子高齢化対策と労働力供給向上で社会を変える?ソフトバンク参入の衝撃

文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
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ロボット、少子高齢化対策と労働力供給向上で社会を変える?ソフトバンク参入の衝撃の画像1ソフトバンクのロボット「Pepper」(「同社HP」より)
 国内系、外資系運用会社を渡り歩き、株式投資の最前線に20年以上携わった後、現在はマネックス証券チーフ・ストラテジストを務める広木隆氏が、「経済のミカタとカラクリ」をわかりやすく解説します。

ドミン:どういう労働者が、実用的に見て最高だとお考えになりますか?
ヘレナ:たぶん、正直で勤勉な人だと思いますが。
ドミン:いいえ、もっとも安上がりなやつですよ。経費もかからないやつ。ロッサム青年は、経費が最低限に抑えられる労働者を開発したのです。それには簡単化するのが不可欠でしたから、労働力向上に直接役立たないものはすべて切ってしまいました。人の値段を上げるようなものは、すべてね。ですから、人を切り捨てて「ロボット」という商品労働者を作ったのです。お嬢様、ロボットは人ではありません。機械としては、我々より完璧であり、高度に発達した知性を持っていますが、心を持っておりません。
(『R.U.R.–ロッサム世界ロボット製作所』<青空文庫/カレル・チャペック著/大久保ゆう訳>より)

「Rossum’s Universal Robots」という原題の同作品は、1920年に発表されたチェコの作家、カレル・チャペックによる戯曲。この劇で初めて「ロボット」という言葉が創造され、使われた。ロボットはチェコ語で「労働」を意味する。

 株式市場でロボット関連銘柄が賑わっている。医療・福祉用のロボットスーツ開発などを手掛けるサイバーダインの一日当たりの売買代金が、ソフトバンクやトヨタなどを抜いて東証全体のトップとなったこともあった。ロボットの腕の関節に使われるトルクセンサーの第一精工や、工場の生産ラインで使われるヒト型ロボットの川田テクノロジーズなどが急騰を演じる場面もあった。

 ロボット関連が注目される理由は、政府の成長戦略にロボットの普及を推進することが盛り込まれたからである。産業競争力会議が6月にまとめた「日本再興戦略(素案)」には、社会的な課題解決に向けたロボット革命の実現が謳われた。「日本がこれまで世界をリードし、そしてこれからも新たな市場を作り出すことができる、イノベーションの象徴とも言える技術は、ロボット技術である」とまで言い切っている。

 確かに日本はロボット大国である。「ロボット」という言い方ではなく、FA(ファクトリーオートメーション)という言葉に置き換えてみれば、オムロン、キーエンス、ファナック、安川電機、三菱電機など、そうそうたる企業の名が浮かぶ。

 ただし、産業競争力会議が描く未来図は、従来の工場の製造ラインに限らず、医療、介護、農業、交通など生活に密着した現場でのロボット活用だ。少子高齢化が進む日本では今後、人手不足が深刻化する。だからこそ女性の社会進出を支援し促し、労働供給力を高めることも重要課題のひとつとなっている。それにも生活密着型のロボットは役立つ。女性は単なる家事以外でも、育児、介護などに携わる比重が男性より高い。そうした分野でロボットが活用できれば、女性の負担をずいぶんと軽減できるだろう。ロボットの普及は単純な労働力の代替を超えて、日本の社会変化を促進する大きな触媒となり得る。

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