●主導した経産省

「週刊東洋経済」(東洋経済新新報社/5月24日号)は、西村康稔・内閣府副大臣の部屋で行われた非公式な会合で示された長谷川氏の原案について次のように報じている。

「この場で関係者に示された長谷川ペーパーの『原案」には、あいまいさのかけらもなかった。現在の労働時間制度は工場労働者を想定した仕組みであり、ホワイトカラーには適さない、それに代わる新たな労働時間制度として『スマートワーク』なるものを創設するというものだ。

 このスマートワークでは、対象者の範囲に業務や地位の限定を設けず、本人の同意と労使の合意に委ねることで、幅広い労働者の利用を可能にするとしている。実際そこで図示された対象者のゾーンには、『ヒラ社員』の最末端、つまり新入社員まで含まれている。本人の同意と労使合意さえあれば、どんな業務内容の新入社員でも労働時間規制が及ばず、残業代なし、深夜・休日割増なしで働かせることができる」

 このスマートワーク構想の発案者が菅原郁郎・経済産業省経済産業政策局長だという。菅原氏は安倍政権の掲げる成長戦略の策定を主導し、消費増税論議では、経産省内ですら「減税については財務省の抵抗が激しく、実現が難しい」とみられていた復興特別法人税の終了の前倒しを勝ち取った。さらに菅原氏は、法人税実効税率引き下げ実現を成長戦略の目玉にする案をひねり出し、今回、残業代ゼロ・ルールの実現を推進する。

 国税庁の民間給与実態統計調査(12年)によると、残業代ゼロ・ルールの対象者となる年収1000万円以上の給与所得者は、172万人で全体の3.8%(管理職も含む)。800万円以上を含めれば8%になり、この層にもルール適用が拡大される可能性が高いといわれている。経団連会長の榊原定征・東レ会長は、「少なくとも全労働者の10%は適用を受けるように対象職種を広げた制度にしてほしい」と注文をつけたが、同ルールの適用対象者が広がると、労働者間の所得格差拡大につながると懸念する声もある。
(文=編集部)

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