–そのほかに、芸能ゴシップ報道が減った理由はありますか?

井上 一般の人たちが、芸能ゴシップを望まなくなったという点も大きいです。昔は芸能人を追い回しているような映像がしょっちゅうありましたが、そういう映像が流れると視聴率が上がりました。今では逆に下がるのです。プライバシー云々の問題もありますが、そもそも人に嫌がられて視聴率も下がることをやる必然性がない。

 あとは、お金の問題もあります。僕は昔、女優の大竹しのぶさんが演出家の野田秀樹さんと付き合っているという情報を得て、大竹さんの家の前で14日間張り込んだことがあります。14日目でやっと証拠映像が撮れましたが、13日間は空振りだったにもかかわらず、テレビ局にはそれを許す予算があったんですよ。カメラクルーを立て、当時は8時間で15万円くらい、超過分も含めて毎日20万円以上のお金が出ていた。それだけで合計280万円くらい使っている計算になりますが、今のテレビ局の台所事情では絶対にありえません。

 今は確実に撮れる案件しか張り込みが許されませんが、そういうものは際どくはないですよね。大スクープになればなるほど、そんなに簡単には映像が撮れるはずがない。プライバシーの問題に加え、視聴率や制作費の問題も考えると、結果的に「もうやめようよ」ということになります。

–そのような状況の中、芸能リポーターの需要も減っているのでしょうか?

井上 芸能リポーターという仕事が、お金の問題も含めてテレビのキー局の情報番組から必要とされなくなりました。坂本堤弁護士の一件【編註:1989年、オウム真理教問題に取り組んでいた坂本弁護士への取材映像を、抗議に来たオウム真理教幹部に見せ、同教団による坂本弁護士一家殺害事件につながった】でTBSのワイドショーがなくなり、その影響で芸能リポーターが仕事をなくした。その後、再開した時には「ディレクターがマイクを持てばいい」というやり方が成立してしまい、「芸能リポーターの解説とか裏情報はいらない」という傾向が強まっていった。そんな中で、どうやったら生き残れるかと考えた時に、僕が活路を求めたのは地方局だったのです。

–なぜ地方局に目を向けられたんですか?

井上 地方局に行けば行くほど、あらゆる“枠”は緩くなります。僕がお世話になったディレクターがたまたま大阪の局のスタッフと知り合いで、その大阪のスタッフから声を掛けてもらったのが20年ちょっと前。当時の大阪では東京で話せない話ができたんですよ。ちょっとしたラジオ感覚ですね。僕のやったことがウケたこともあって、いろいろな芸能リポーターが地方へ行くようになったんです。特に大阪では各局にそういう番組があふれ、「芸能リポーターバブル」みたいな現象が起きましたが、やはり「バブル」なので、しょせんどこかで限界が来て自然淘汰され、視聴者が面白いと思う人しか残らなくなった。

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