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なぜ近年、税収上振れ続く? 18年度以降には解消の公算 険しい20年度PB黒字化

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
なぜ近年、税収上振れ続く? 18年度以降には解消の公算 険しい20年度PB黒字化の画像1内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(同府HPより)

 近年、国の税収が上振れしている。当初予算との対比でみれば、2010~13年度にかけて4年連続で上振れしており、平均上振れ額は2.5兆円にも上る。また、補正後予算との対比では09~13年度にかけて5年連続で上振れしており、平均上振れ額は1.5兆円となっている。要因を探るべく、税収の項目ごとにそれぞれ上振れ額を計算してみると、法人税収が当初予算との対比では平均1.8兆円、補正後予算との対比では平均1.0兆円それぞれ上振れしていることがわかる。つまり、当初予算との対比では73%、補正後予算との対比では68%、法人税の税収上振れ分で説明できることになる。

 確かに、10年度は名目GDP成長率も当初予算時点での見通し+0.4%から実績は+1.3%となったため、税収の上振れもうなずける。しかし、同年度の税収を見ると、当初予算時点で前年比▲3.5%だったのが、補正後予算で同+2.3%に上方修正されている。そして決算時点に至っては同+7.1%にまで上振れしている。

 特に11、12年度のケースには多くの示唆がある。注目すべきは、両年度とも名目GDPはマイナス成長となっているが、税収はむしろ増加していることである。一般的に、税収弾性値は1.1とされていることからすると、少なくとも近年の税収は名目成長率以外の要因で増加してきたことになる。

 これに対して、繰越欠損金 【編註:決算が赤字(=欠損金発生)となった場合、翌期以降の黒字(=課税所得)と相殺できる税務上のルール】の減少に伴う欠損法人割合の低下により、課税ベースが拡大したという指摘がある。実際、欠損法人割合は09年度にピークとなっており、10年度以降低下に転じている。しかし、欠損法人割合が明確に低下したのは12年度であり、11年度の税収の増加は欠損法人割合の低下のみでは説明できない状況にある。

 背景には、繰越欠損金が残っていても欠損法人ではない企業もあり、欠損法人割合の低下だけでは説明できない税収の増加分がある。日本では最大9年の赤字繰越が可能な中、繰越期限を迎える企業が増えることで、欠損法人割合が低下しなくても税収が増えてきた。しかし、欠損法人割合の低下や繰越欠損金の減少にも限度がある。従って、足元で税収が上振れしているからといって、今後も税収の上振れが永遠に実現するとは言い切れない。

 だからこそ、欠損法人割合や繰越欠損金がどの水準まで低下や減少することが可能かを知ることが重要となる。実際、欠損法人割合や繰越欠損金の時系列データを見ると、名目成長率と密接な関係にあることがわかる。そこで、今後の日本の潜在成長率を2%程度と仮定して欠損法人割合と繰越欠損金の理論的な水準を計算すると、欠損法人割合と繰越欠損金の理論的な水準がそれぞれ62%、52兆円程度になる。

 以上を踏まえて、実際に欠損法人割合の低下に加えて、理論値からの上振れ分も含めて税収がどう変化するかを試算した。具体的には、12年度の欠損法人割合低下幅(▲2.0%)が欠損法人割合の理論的な水準に到達するまで続くとして、名目成長率が2%の場合の税収を試算した。結果は、名目2%成長であれば16~17年度まで税収の上振れが期待できるという結果になる。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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