『女優 森光子』(集英社)
「婦人公論」(中央公論新社/8月7日号)は、『介護、相続、収入格差 きょうだいとモメないために』という特集を組んでいる。
「同じ家に生まれたきょうだいでも、進む道はそれぞれ。年を重ねるにつれて生き方や価値観の違いが大きくなるなか、親の老いとともに『介護』や『相続』という問題が生じてきます。さらに、収入や金銭感覚の差など『お金』が事をややこしくして……。人生後半に待ち受ける、きょうだいどうしのトラブル。早めの準備と心構えで、最悪の事態を回避しましょう」という内容だ。
特に有名人が家族に食い物にされていくエピソードがすさまじい。
●森光子氏、消えた20億円の遺産
まず、特集記事『「渡鬼」5姉妹の相続問題は? 信用しながら安心できない身内ならではの難しさ』では、人気テレビドラマ『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)のプロデューサー・演出家である石井ふく子氏が、ある女優から受けた相談について打ち明ける。
「先ごろ亡くなったある女優さんから生前、直接こんな相談を受けました。年をとって、体調もいまひとつすぐれない。そろそろいろんな身辺整理をしておこうと思って通帳を見たら、まったく貯金がなかったそうなのです」
稼いでいる人だったので、事情を尋ねると親族に経理を任せていたとのことで、石井氏自らその親族に話を聞いてみたが、要領を得ない話ばかりで帳簿も見せてくれない。結局は税理士のアドバイスを得て「都内にあった自宅を担保にしてお金を借り、それで必要な準備を済ませたうえで、彼女は旅立っていきました。家は失ったけれど、後には借金も何も余分なものは残らなかった。ただし、『失った』お金の行方は、わからずじまいです」(同記事より)。
記事では名前が伏せられているが、石井氏と仲がよく、亡くなった後に異様に少ない遺産が話題となったのは女優の森光子氏で、「ある女優」が彼女のことを指しているのは間違いないだろう。
例えば、「週刊新潮」(新潮社/2013年3月14日号)の『京都に埋葬される国民栄誉賞「森光子」 遺産が実にささやかだったわけ』や、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/2013年8月10日号)の『多額の遺産めぐり争い噴出 芸能界・政界の相続事情』では、森氏の遺産総額は20億円ともみられ、その一部はお気に入りだったジャニーズ事務所のタレントに遺贈されるのではないか、などと憶測も流れたが、現実には推定評価額5000万円の自宅マンションしか残っていなかったと報じている。
「この世界では親やきょうだいがマネジメントを担当したり、お金を握ったりということがそんなに珍しくありません。気兼ねなく任せられるし、無理が利くといったメリットもあるけれど、身内ならではの難しさもあるのかもしれませんね。彼女も親族のことを信用しながら、どこか安心しきっていないところがあったように感じました」と石井氏。『渡鬼』でも描けないような怖い話だ。