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碓井広義「ひとことでは言えない」(8月3日)

朝から不倫『花子とアン』、上戸彩不倫『昼顔』、エグイ『家族狩り』…注目の夏ドラマは?

文=碓井広義/上智大学教授
朝から不倫『花子とアン』、上戸彩不倫『昼顔』、エグイ『家族狩り』…注目の夏ドラマは?の画像1『花子とアン』公式サイト(「NHK HP」より)

 梅雨が明けたと思ったら、今度は全国的な猛暑が続いている。またPM2.5など大気汚染粒子の拡散も各地で報じられている。

 ならば、「遠くの避暑地より近くのドラマ」ということで、大人が見てもいい今クール(7~9月期)の連続テレビドラマ、いわゆる「夏ドラマ」を紹介してみたい。

●『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)

「男性からキレイだと思われる女と、そうじゃない女の人生って、ぜんぜん違うと思います」――このドラマのヒロインの一人、吉瀬美智子のセリフである。女性視聴者を敵に回すかもしれない、刺激的な言葉だ。

上戸彩が浮気妻? 白戸家の娘にしか見えないんだけど」と思っていたら、ちゃんと“オトナの女”担当の吉瀬がいた。女性雑誌編集長を夫にもつ美人妻、良き母親、瀟洒な一戸建てに住むセレブ主婦でありながら、一方ではバリバリの「平日昼顔妻」だ。この吉瀬が、偶然知り合った普通のパート主婦・上戸を禁断の世界へと誘い込む。

 吉瀬の相手は才能があってアクの強い画家(北村一輝)。上戸のそれは生真面目な生物教師(斎藤工)。だが、いずれもすんなりと不倫に走るわけではない。特に上戸は自分の気持ちを疑ったり、抑えたりしながらの一進一退が続く。いや、そのプロセスそのものがドラマの見所なのだ。

 また前述のようなドキリとさせるセリフをはじめ、妻や夫がもつ“別の顔”の描写など、井上由美子の脚本が冴えている。ただし、このドラマを夫婦そろって見るのは、互いのハラを探り合う事態を招くからやめたほうがいい。その意味では視聴率もさることながら、最近話題の録画再生率【編註:番組を録画して放送終了後に視聴する人の割合を示す指標】が高そうな1本だ。

●『家族狩り』(TBS系)

 原作は20年以上前に書かれた小説家・天童荒太の長編小説。しかも連続一家殺害事件というエグイ内容の物語に挑戦している。ヒロインは児童ケアセンターの児童心理司(松雪泰子)だ。他の主要人物として、高校の美術教師(伊藤淳史)、そして捜査一課の警部補(遠藤憲一)がいる。本来なら無関係なはずの彼らが事件に引き寄せられ、リンクしていくのだ。 

 第1回放送で、伊藤が暮らすアパートの近くで一家心中と思われる事件が発生した。少年が両親と祖父を殺害して自殺したというのだ。しかし遠藤は最近起きた別の心中事件も含め、その“見立て”に納得がいかない。後輩の刑事に言う。「誰かが家族を狩っているんだ。家族狩りだよ」

 上々の滑り出しである。何より、事件の背後にただならぬものを予感させた。また人物像にも奥行きがある。認知症で徘徊する父と、その介護に疲れた母(浅田美代子)を抱えた松雪。非行に走った娘はもちろん、家庭内に問題を抱える遠藤。それぞれが十分リアルだ。

「家族」とは理屈だけではない繋がりの他者であり、身近だからこそ厄介な存在でもある。このドラマは凄惨な事件の真相を追うことで、家族とは何かを問いかける問題作だ。本来は重くて暗い話だが、伊藤の軽みがほどよい緩衝材になっている。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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