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碓井広義「ひとことでは言えない」(8月3日)

朝から不倫『花子とアン』、上戸彩不倫『昼顔』、エグイ『家族狩り』…注目の夏ドラマは?

文=碓井広義/上智大学教授
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●『若者たち 2014』(フジテレビ系)

 今クールの『HERO』や『GTO』(共にフジテレビ)もそうだが、続編やリメイクは最近のフジテレビのお家芸だ。ヒットドラマは貴重な資産であり、それをうまく生かそうとするのもまた商売ではある。とはいえ、よもや『若者たち』を引っ張り出してくるとは思わなかった。

 田中邦衛や山本圭が出演したオリジナルが放送されたのは1966(昭和41)年。高度経済成長の陰に隠れた社会問題や矛盾を物語に取り込んだ社会派ドラマだった。48年後の今、これをリメイクする意味はなんなのか。

『若者たち2014』を見ていて、あらためて驚くのは豪華キャストだ。妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、蒼井優、長澤まさみ、橋本愛、吉岡秀隆と主演級をこれだけ揃えたドラマも珍しい。彼らを通じて学歴、就職、家族、恋愛、結婚など、いつの時代にも共通する若者たちの課題や悩みを、現代社会という背景の中で描いていこうとする意思が垣間見える。

 そして、ドラマ全体に漂う昭和テイストも悪くない。家族同士が自分の感情をむき出しにして、気持ちを直接ぶつけ合うドラマは久しぶりだ。メール万能の時代に「鬱陶しい!」と言われそうだが、ほっとするような人間らしさがそこにある。演出陣の中軸は『北の国から』シリーズ(同)のベテラン・杉田成道だ。その職人技が、昭和と現在とを見事につないでいる。

●『花子とアン』(NHK)

 春に始まったNHK朝の連続ドラマ小説だが、夏に入って俄然面白くなってきた。以前、『あまちゃん』を論評した際、「母娘3代のトリプルヒロインが効いている」と書いた。それに倣えば、『花子とアン』は花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)によるダブルヒロインのドラマだ。

 放送が始まる前、『赤毛のアン』の翻訳者・村岡花子って誰だ? という印象だった。そんな主人公を、演技に定評のある吉高がうまく味付けし、魅力的につくり上げてきた。

 だが、それ以上に弾みがついたのは、実在の花子が歌人・柳原白蓮と親交があったおかげだ。白蓮の人生は波瀾万丈で、福岡の炭鉱王である夫を捨て、7歳下の社会運動家・宮崎龍介(ドラマでは宮本龍一)と駆け落ちした「白蓮事件」は大正期を代表する不倫スキャンダルである。ちなみに宮崎龍介は、孫文の支援で知られる宮崎滔天の長男である。世間も騒ぐはずだ。 

 ドラマは「白蓮事件」を正面から描き、凄艶な恋する女と化した蓮子を仲間が喜々として演じている。駆け落ちシーンでは、語り手の美輪明宏が歌う『愛の讃歌』まで流れた。またその翌朝、一夜を共にした部屋で仲間は鮮やかな赤の長襦袢姿を披露。役者も作り手もノリノリなのだ。 

 これまでの朝ドラの爽やかなヒロイン像を守りつつ、不倫という通俗性を堂々と盛り込むチャレンジ精神が功を奏している。
(文=碓井広義/上智大学教授)

●碓井広義(うすい・ひろよし)
上智大学文学部新聞学科教授。1955年、長野県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年、テレビマンユニオンに参加し、20年にわたってドキュメンタリーやドラマの制作を行う。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授などを経て2010年より現職。専門はメディア論。放送を中心に、メディアと社会の関係を考察している。北海道新聞、日刊ゲンダイ、月刊民放などに放送時評を連載中。著書に「テレビの教科書」ほか。民放連賞特別表彰部門「放送と公共性」審査員。放送批評懇談会理事。

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