NEW
日向咲嗣『「無知税」回避術 可処分所得が倍増するお金の常識と盲点』(8月5日)

家賃は崩壊している?「平均的な家賃」のウソ 不動産業界のいびつな情報流通構造

文=日向咲嗣/フリーライター
【この記事のキーワード】, ,

 それは、「表参道の1DK、18万円」と「南千住の2DK、5.3万円」も一緒くたにして計算しているからであって、東京23区に住んでいる人は、みんな9万円くらい払っているわけではない。

 参考になるのは、いま自分が住んでいる部屋と同じ条件の物件がいくらの家賃で募集されているかだけであって、それ以外の平均値などは、なんの意味も持たないのである。

 第二に、表面家賃と実質家賃の違いが挙げられる。

 家賃を一定期間(1~3カ月)無料にする「フリーレント」と呼ばれるオプションを付ける物件が最近目立って増えてきたが、それは実質的には家賃の値引き行為にほかならない。それにもかかわらず、なぜかその値引きは統計データに一切反映されない。

 例えば、家賃12万円で募集している部屋に、2カ月のフリーレントが付いている場合、2年間の契約期間の総額でみると、通常より24万円安くなっている計算。1カ月当たりにならせば1万円安くなっているのだから、家賃11万円にしたのと同じことである。

 ならば、どうして最初から家賃を11万にしないのかというと、家賃を安くしてしまうと、すでに入居しているほかの部屋の人から「うちも安くして」と要求されかねないからだ。一定期間無料で、家賃は1円も値引いてないフリーレントであれば、そんな心配は一切ない。

 また、収益物件として転売するときに、家賃を安くしてしまうと、「利回り」と呼ばれるその物件の収益性を計る指標が低くなるが、フリーレントであれば収益性をより高く見せることができる。

 従って、大家はできるだけ家賃は下げずに、目に見えないところで実質的な値引きをしたがるのだが、表面に出てこないために、実質的な家賃は下がっているにもかかわらず、調査データなどでは、高いまま表示されがちなのである。

●実情を把握して不動産屋と交渉すべし

 しかし、そういった“大本営発表”の情報が、徐々に通用しなくなった。

 かつては駅前の不動産屋に行って、希望条件に合った物件を紹介してもらうしかなかったため、高い仲介手数料を取れる物件や自社の管理物件を優先して紹介されるなど、借り手は不動産屋のいわれるままだったが、いまは自ら主導権を握ることも難しくなくなってきた。

 スマートフォンで賃貸サイトを検索するだけで、いつどこにいても一瞬にしてめぼしい物件を検索することができるようになったからだ。その気になって調べれば、自分がいま住んでいるアパート・マンションの隣の部屋やほかの階の家賃すらわかってしまうわけだから、これは非常に画期的なことである。長年、プロの業者だけで独占されてきた市場の情報が一般にもオープンになっているわけだが、その情報を有利に活用できる人と、そうでない人とでは、大きな差が出てしまう。

 いまのところ、家賃崩壊が始まっていることに気づいて、値下げ交渉をしたり、安い部屋に引っ越したりした人だけが家賃デフレのメリットを享受できているわけで、「家賃が下がるはずはない」と思い込んでいる無知な人は、いくら世間相場が安くなっても1円の利益も得られない構造になっている。

「もう“無知税”なんて払いたくない」と思う人は、いますぐ理論武装すべきである。
(文=日向咲嗣/フリーライター)

情報提供はこちら

RANKING

5:30更新
  • マネー
  • ビジネス
  • 総合