老人ホーム大手のサニーライフ、元幹部が提訴 社長の独断による解雇常態化が露呈
「Thinkstock」より
裁判資料によれば、原告の日野人志氏(仮名)は、東京都内の私立大学を卒業後、地方銀行、大手国内証券、外資大手証券などを経て川島コーポレーションに入社し、2004年夏から約1年、本社の君津市で営業本部長として勤務をしていたが、自宅から遠いことを理由に退職。その後、小売量販店大手グループなどを経て、12年8月に再び川島コーポレーションに入社し、東京都中央区銀座にあるサニーライフ東京事務所に幹部社員として勤務した。肩書は統括副本部長、仕事内容は人事労務管理担当、年俸は800万円だった。
ちなみに川島コーポレーションは、川島輝雄社長が一代で築き上げた企業。専務取締役は川島正代、常務取締役は川島大倫、監査役は川島裕子と、役員には親族も名を連ね、親族以外の取締役である宮尾三郎氏が現場を仕切っている。
日野氏が取り仕切る人事部では、数カ月の間に9人いる事務員のうち5人も辞めた。まず、大卒新人の男性A氏(仮名)が入社して間もなく、川島社長から「A氏の仕事ぶりが悪いので辞めさせるように」と日野氏に指示があり、日野氏はA氏を呼び出して辞めさせた。30代の男性B氏(仮名)は、社労士の資格を持つ優秀な人物だったが、容姿が社長の気に入らなかったようで、「2週間以内にクビにしろ」との指示を受け、日野氏はB氏を辞めさせた。
女性C氏(仮名)は、正しいと思ったことは必ず主張するタイプで、ある上司と口論になり、怒鳴りつけられて泣いて以降、その上司と険悪な関係になった。またC氏は、体の前で両手を重ねて話す癖があり、川島社長とその姿勢で話していたところ、川島社長は「上品すぎて気に入らない」とC氏を退職に追い込むように別の部下に指示し、辞めさせたという。
●経営陣との関係が悪化し、急遽解雇
このように次々と社長の一存で社員を解雇する企業風土の中で、日野氏はもっぱら切る側に回っていた。しかし、12年11月の人事会議の席で異変が起きた。日野氏と、日野氏の直属の部下である青山氏(仮名)らが、社員の冬のボーナスの評価項目の簡略化を提案。すると、従前の評価方法を考え出したのが宮尾取締役だったためか、宮尾取締役が怒り出し、会議が停滞した。結局、日野氏らの提案は採用されたが、それを機に宮尾取締役から日野氏への風当たりが急に激しくなった。
数日後、川島社長から「青山をクビにしろ」と日野氏に指示があったが、その際に日野氏は「それはもう少し待ってください」と青山氏をかばった。しかし別の日、青山氏は宮尾取締役らに呼び出され、畑違いの他部署への異動を打診された。日野氏も宮尾取締役に呼び出され、「サニーライフ柏やサニーライフ平塚御殿での収益が上がらないのは、人事がヘルパーを集めないからだ。すぐに改善しろ。2度目のチャンスはないぞ」と宣告された。