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江川紹子の「事件ウオッチ」第10回

PC遠隔操作・片山被告“”精神鑑定不実施”のデメリット 「平気で嘘がつける」彼の心の闇を知るべきだ

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●弁護側は控訴の意向だが……

 そんな彼の心の状況を専門家が分析し、どういう問題があって、それを克服するにはどうすべきかを見極めていけば、彼が一連の事件を起こしてしまったのかを解明する大きな手がかりになったのではないか。また、あれだけ嘘を発信してきた彼が、現在語ることはすべて本当なのか、といぶかしむ声も聞く。鑑定の中で、彼の本音に迫ることもできたはずだ。再犯でもあり、彼には実刑判決が下されることが予想されるが、いずれは社会に戻ってくる。刑務所で鑑定結果を生かした更生プログラムを施すことができれば、社会にとってもプラスだろう。

 裁判所も、弁護人が推薦する臨床心理士が、被告人の顔がよく見える弁護人席に座って、被告人質問の様子を観察することを認めるなど、鑑定に当初から冷淡なわけではなかった。ただ、片山被告が収監されている東京拘置所は、面会希望者が多いことや警備上の都合からだろう、鑑定人といえども、アクリル板越しの面会室で会うことしか認めず、面会時間も30分程度という制限があるなど、必要な検査が十分行えない。そのため、実際に鑑定を行うとなると、臨床心理士が仕事の拠点としている岐阜県の拘置所に移送しなければならなくなる問題もあった。

 しかし、そうした手間や経費をかけても、実施する意味はあったのではないか。あるいは、東京拘置所が無理であれば、一時的に都内の警察署の代用監獄(留置場)に身柄を移すなど、工夫の余地はなかったのだろうか。

 裁判は、責任能力に問題がなければ、被告人が本当に罪を犯したかどうかの事実を確かめればいい、という考え方もあるだろう。しかし、4人の誤認逮捕者を出し、4つの警察が合同捜査本部を作って、大がかりな捜査を行うなど、社会問題ともなったこの事件の真相を深掘りする機会がありながら、それを逃してしまうことは、あまりに惜しい。

 鑑定人候補の臨床心理士は、すでに片山被告本人や母親などには何度か面会しているという。裁判所の判断で行う鑑定とは別に、東京拘置所に収監されたまま、その条件が許す範囲で分析を行う私的鑑定を行う道は残されている。だが、弁護人は裁判所の鑑定が実施されなければ、私的鑑定は行わず、控訴して高裁で鑑定を再度求める、としている。弁護人の立場としてはやむを得ないのかもしれないが、できるだけ早く、少しでも真相に近づきたいという立場からすると、これもまた残念な気がする。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。元厚労省局長・村木厚子さんの『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』では取材・構成を担当。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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