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『ムカつくことには合理性がある~若き老害・常見陽平が吠える』(第3回)

なぜ大人は若者に夢を持てと言うのか?便利な夢という言葉で、人生を狂わせないために

文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC
【この記事のキーワード】

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日立製作所:庄山悦彦社長(02年)
「機会は平等でも結果は不平等になる厳しい競争の時代になった。未来はやってくるものではなく、自ら作り出すもの。夢を実現する執念と自信をもってほしい」

・高島屋:増倉一郎社長(02年)
「お客に『夢』『興奮』『感動』につながる提案をしていく」

・本田技研工業(ホンダ):吉野浩行社長(03年)
「夢や目標を持ち、志高くチャレンジし続けてほしい」

・キヤノン:内田恒二社長(09年)
「プロフェッショナルとしての意識を持ち、夢の実現に邁進してほしい」

・日本電産:永守重信社長(10年)
「ホラを吹き、夢を語るのが若者の特権だ」「実現に向けて必死の努力を」

 個人的な結論を先に言うならば、「なぜ、大人は若者に夢を持てと言うのか?」という問いに対する答えは、「便利な言葉だから」だと考えている。

 それはなぜだろうか? いくつかの理由がある。一つは、若者の味方をしておくと得だからだ。若者の味方をしているだけで、新しいモノ好き、優しい人を演じることができる。特にこれはインターネット上では有効だ。先日、「cakes」で中川氏と対談した際も話題になったが、ネット上では地に足のついていないことを言っている人も含め、若い人を応援するのがウケる。夢を追っているふうの人がウケる。

●その人の夢と会社の夢をすり替え?

 もう一つは、夢という言葉は実に曖昧だからこそ、若者を熱狂的に働かせるのに便利なのである。ブラック企業の社長によくあるパターンではあるが、夢という言葉を連呼することによって、若者の支持を集めるのだが、気づけばその夢は誰の夢なのか、わからない状態になってしまう。企業のビジョンに「夢」という言葉が入っているブラック企業は枚挙に暇がない。いつしか、その人の夢と、会社の夢をすり替えてしまうのである。

「夢を持て」と言われたところで、明確な夢を持てない若者だっている。何かわからない。社長は夢を持っている(風)である。夢を持っている人はすごい、だから社長についていこう、というような妙なすり替えが起こってしまうのである。あるいは、企業は「夢」という言葉を盛り込んだ、ポエムのようなビジョンを掲げている。それが、共感を得てしまうのだろう。

 夢は否定しない。私も夢があったから、物書きや大学の先生になることができたし、その先の夢を今も追っている。だが、夢の悪用はごめんだ。

 というわけで、若者に夢を持てという大人は、実は若者の人気取りをしているのではないか、若者の夢と会社の夢をすり替えようとしているのではないかと、立ち止まって疑ってみることをお勧めする。夢に踊らされないように、そんな視点も持っておきたい。
(文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC)

●常見陽平(つねみ・ようへい) 
評論家、コラムニスト、MC。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。著書に『「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える』(NHK出版新書)、『最新版 就活難民にならないための大学生活30のルール』(主婦の友社)など多数。

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