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性同一性障害者を苦しめる、“虐待”と困難な日常 性別適合手術の実態を経験者に聞く

文=江端智一
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●学校での取り組み

 次に、性同一性障害の子どもに対する、学校での取り組みについてお話しします。

 性同一性障害に悩む子どもへの対応は、とてもデリケートな問題です。学校は、児童や生徒たちを、「男」と「女」の2種類で管理していると思いますが、私自身、このシリーズの執筆を開始するまで、このような分け方に問題があるなど、思い至ったこともありませんでした。

 それでは、まず、簡単な事例で「学校での問題」をイメージしてみましょう。

 前述のマミさんのように、プールで上半身裸体を強要される「女の子」をはじめ、
・男子更衣室の中で着替えを強いられる「女の子」
・制服のスカートを毎日着せられる「男の子」
なども、いじめ、または虐待に値します。

 しかし、それを周りに気づいてもらうのは難しいと思います。しかも、本人が「苦しい」と勇気を出して告白しても、最も近くにいる親ですら理解してくれないのであれば、それは社会から「生きるのをやめろ」と言われ続けているような苦しい日々でしょう。

 学校側は、この問題に対して対応を行ってきたようです。

 文部科学省の発表の「学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査について」によれば、2013年4~12月の調査期間において、学校側に悩みを相談したのは約600人で、約6割の学校で戸籍上の性と異なる制服着用やトイレの使用を認めるなど、なんらかの配慮をしたそうです。

・制服のある学校の場合……自認する性別の制服着用や、体操着(ジャージ等)での登校を認めている
・制服のない学校の場合……男子生徒のスカート登校を認めている
・髪型……男子生徒の長髪(一定の範囲)を認めている
・学用品……男女の色分けシールの利用を避ける、自認する性別の色スリッパの使用を認めている
・トイレ……職員トイレや多目的トイレの使用を認めている
・通称の使用……文面の記載や公式行事などでは、「○○君」ではなく、「○○さん」で統一している
・体育、保健体育などの授業……男女混合チームを作り、発言しやすい環境を作っている
・部活動……自認する性別の活動に参加することを認めている
・修学旅行等の宿泊……一人部屋の使用を認め、入浴時間をずらしている
・他の生徒、PTAへの説明……本人、または全校生徒、PTAに対して説明している。または本人の希望で説明しないこともある。

「私が児童または生徒だった時、こういう対応は、まったくなかったな」と思いながらレポートを読んでいました。レポートの後半には、教育現場での対応の難しさや、課題も記載されているので、ぜひ御一読ください。

 ただ「学校側に悩みを相談したのは約600人」というのは、自分で「性に対する違和感」をカミングアウトすることができた児童または生徒だけです。悩んでいる子どもは、もっと多いと見るのが妥当です。

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