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性同一性障害者を苦しめる、“虐待”と困難な日常 性別適合手術の実態を経験者に聞く

文=江端智一
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 13年は769人も認可されておりますが、一昨年に比べて32名の増加にとどまり、人数としては安定しつつあるように見えます。そこで、年間800件程度の申請数で飽和すると仮定し(仮定2)、さらに手術治療を行う世代は、20~50歳の30年間程度と考えました(仮定1)。

 これらより、将来的には国内での性別変更者は合計2万4000人程度で、安定的に推移すると考えました。

 次に、性に違和感を持つ人の数を推定する上で採用したデータと、江端の仮説を以下に示します。

・性に違和感を持ちながらも、距離的、または金銭的に国内クリニックに通院できない人、または通院を希望しない人が、50%(文献1から導いた江端仮説)
・心療治療後にホルモン治療に至る人が33%(文献2より)
・ホルモン治療後に、手術治療に至る人が18%(文献2より)
・国内クリニックに通院せず、最初から海外で手術治療を行う人は数%であるが、それぞれの治療のフェーズが進んでいくと、海外での手術療法を望む人の割合が増え(江端仮説)、全体として海外の手術療法を選択する人が80%強となる(文献2より)
・手術療法を終えた人の95%が戸籍性別変更の申請を行う(江端仮説)
※文献1 「性別違和をもつ人々の実態調査」
※文献2 「日本における性同一性障害の診療」

 これらの確率(と江端の主観に基づく仮説)を使って、ベイジアンネットワークを構築し、ベイズ推定の計算を行った結果を以下に示します(HPにデータをアップしておきます。なお、正確なデータをお持ちの方がいらっしゃったら是非ご連絡ください。直ちに再計算してご報告致します)。

性同一性障害者を苦しめる、“虐待”と困難な日常 性別適合手術の実態を経験者に聞くの画像3

 上記で算出した2万4000人が13%に該当すると考えると、性に違和感を持つ人数は、日本全国に18万5000人程度存在することになります。これを、現在の日本の人口1億2570万3000人で換算すると、680人に1人という結果になりました。

 性に違和感を持つことだけで、直ちに性同一性障害と認定されるわけではありませんが、自分の性に違和感を持っている子どもが、それぞれの学校に1人くらいいるということは、それほど荒唐無稽な話ではないと思います。

私の推定アプローチが正しいとすれば、現時点において自分の性に違和感を持っている子どもが、全国で1万5000人くらい存在することになります。

文部科学省のレポートにある600人という数については、「実数を反映しているものとはいえないと考えている」というコメントがありますし、それは仕方のないことだと思っています。

 しかし、もしかしたら、私たちの見えないところで、その600人の25倍もの子どもたちが苦しんでいるかもしれないということを、覚えておいていただきたいのです。

(謝辞)
今回のベイズ推定の計算には、NTTデータ数理システムのベイジアンネットワーク構築ツール「BAYONET」を使わせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

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