科学論文の世界では「不正」すなわち「ミス」が見つかることは少なくなく、「不正」の指摘があれば「正し」、さらに検証を受ける、という“手続き”の連続である。それが科学における検証のあるべき姿だ。その結果、再現性がなければ消えていく。科学は、そのような仮説と検証のせめぎ合いで発展してきた。

 むろん、今回のSTAP論文に画像の「不正」があったことは小保方氏も笹井氏も認めており、科学の手続きに則りネイチャーの論文も取り下げた。しかも「不正」と認定されたのは「画像の加工」であり、捏造を行ったという事実はどこにもない。現在、理研では論文を再検証するために再現実験が行われており、ルールに則ったプロセスにある。これまでも多くの学者の「不正」が指摘されているが、マスコミで大きく取り上げられることなく、ほとんど知られることもなかった。

 しかし同番組では、一般的な「不正」の意味、つまり「自らの利益を優先した悪意ある行為」という意味を含めており、番組構成も科学的検証とは程遠い、事件の犯人を追うような構成となっていた。これまで質の高い科学番組を制作していたNHKスペシャルとは思えないずさんな内容であった。その結果、小保方氏の「ES細胞窃盗および捏造説」を視聴者に印象づけた事実は大きい。

 番組の冒頭部分で、このような場面があった。理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターの見取り図がCGで現れ、小保方氏が実験していた場所へと画面が展開していく。その時のナレーションを、そのまま以下に掲載する。

「2人が共同で研究を進めたのは、C棟4階にあった若山研究室。
小保方氏がいつもいたのは、壁で仕切られた小部屋。
奥まった場所だった。
ここで、一人、作業をしていたという。
どんな実験をしていたのか…」

 低音で静かな女性のナレーション、建物の奥の小部屋へとCG展開される構成は、さながら事件発生現場の再現を彷彿とさせた。
 
 心理学のテクニックには、相手に意図したイメージを想起させる方法がある。この場面では、多くの視聴者の頭に、「小保方氏は、完全に死角になる場所で、誰にも知られることのない何かをしていた」というイメージを想起させたはずだ。小保方氏の研究場所を示すことに、何の意味があるのだろうか。

 この段階で同番組は、すでに科学的検証番組ではないことがおわかりだろう。なんらかの意図を持って、この番組は構成されていたとみてよい。

●法令違反の疑い

 さらに次の場面で、驚くべきものが映し出される。NHKが独自に入手したという小保方氏の実験ノートのコピーである。視聴者には受けたかもしれないが、これは明らかな秘密保持に対する法令違反である。理研の職員は準公務員であり罰則規定のある法律を順守しなくてはならない。参考までに、独立行政法人理化学研究所法の第十四条、第二十三条を記載しておく。

・第十四条  研究所の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。

・第二十三条  第十四条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ