このワンオペについて小川氏は「すべての時間帯において、売り上げに対応する科学的なシフト、労働投入を組み立てている」と語る。社員の生産性をいかにして極限まで高めるかという追求から編み出されたのが深夜帯のワンオペだった。全店には監視カメラが設置され、監視役の社員が24時間、クルーの動きをモニターしている。ちなみにゼンショーはこの監視体制について「強盗など防犯対策」と説明している。

 吉野家や松屋がアルバイトの休息や安全上の問題から「夜間の1人勤務はありえない」としているのに対し、すき家は多くの店舗で深夜のワンオペが実施されていた。

 このワンオペは、強盗の危険にさらされるという、強烈な副作用をもたらした。すき家をターゲットにした強盗が多発。すき家は飲食店の中でも強盗被害の多さで断トツだった。警察庁の調べによると、09年の被害件数は24件で飲食店のトップ。10年は57件と倍以上に増えた。同年に発生した飲食店を狙った強盗の総数は121件で、その半数近くがすき家だった。さらに11年1~9月に全国の牛丼チェーンで発生した強盗事件71件のうち9割近くに当たる63件がすき家で起きた。すき家が狙われる理由は、アルバイト店員の夜間1人勤務でレジが入り口近くに1台しかない店舗が多いためだ。

 各都道府県警はすき家を個別に指導してきたが改善が見られず、事態を重く見た警察庁は11年10月13日、ゼンショーの担当者を呼び、防犯強化を要請したほか、同月25日夜から26日朝にかけて都道府県警に指示して、すき家の全国一斉の抜き打ち調査を行った。警察庁がこうした対応をするのは異例中の異例のことだ。これを受けてゼンショーは11年12月末までに全国1700店のうちの6割、12年3月末までに全店で深夜も複数勤務体制にすると表明した。

●ワンオペ解消進まず、社員大量離職

 しかし深夜のワンオペ解消という約束は、守られることはなかった。第三者委員会の報告書を受けた会見でゼンショーは「2人体制を目指していますが、今の進捗率は50%ぐらい。1日も早くこれを100%にしたいと思っています」と述べた。11年末にワンオペを解消すると言明してから3年半たっても、深夜の2人勤務になった店はやっと半分の状態なのである。

 ワンオペの解消に二の足を踏んだのは、業績を直撃するからだ。ゼンショーの14年3月期の連結売上高は前年同期比12%増の4683億円を上げたが、本業の儲けを示す営業利益は45%減の81億円と大きく落ち込んだ。深夜時間の複数人体制による人件費の増加が、減益の主な要因である。

 こうした厳しい労働環境を受け、就職などで学生クルー(アルバイト店員)が多く退職する2~3月に、手間のかかる新メニュー「牛すき鍋定食」の導入が追い打ちをかけ、クルーの離職が相次ぎ、店舗の大量閉鎖に追い込まれた。

 急成長の源だったワンオペ廃止によりゼンショーは、ビジネスモデルの大きな転換という試練を迎えているといえよう。
(文=編集部)

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