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ジャーナリズム

ストレス検査義務化が法制化、職場うつの抑制になるか?職場改善面や実効性に疑問の声も

文=海部隆太郎/ジャーナリスト
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 今回の法律に罰則規定はないので、対象となる企業がストレス検査を実施しなくても、問題視されるのはコンプライアンスだけ。大手企業はともかくも、中小企業がどこまで取り組めるのか。厚労省安全衛生部は「難しい話ではなく、多額の費用がかかるわけでもない」としているが、「日本にある約380万の中小企業のうち対象となるのは2割程度。その大半は、法律が成立したことも知らない」とメンタルヘルス関連企業の役員は語る。

 企業向けにメンタルチェックなどを提供するEAP(従業員支援プログラム)企業や損害保険会社は、来年度から施行されるストレス検査の義務化を追い風として、新サービスの開発、売り込みに取り組む。「意識の低い経営者に、少しでもメンタルヘルスへの費用負担の必要性を感じてもらえるようになる」(大手EAP企業)といい、中小企業の顧客開拓を行う方針だ。

●企業側が恐れる労働訴訟リスクの増大

 一方、企業が恐れるのは労働訴訟だ。これまでも過重労働でうつ病になり自殺した社員の家族からの訴えで、億単位の賠償を命じられる判決があった。「ただでさえ、企業は不利な状況であり、さらに法律に明記されているストレス検査義務も果たさなかったら、どんな裁判でも勝てるわけがない」と中堅製造業の労務担当者は話す。

 悪意があれば、「自分がうつ病になったのは、何も対応しない会社のせいだ」と訴えることも可能かもしれない。訴訟が怖いからストレス検査を実施するというのでは、職場を原因とするうつ病を減らすという本来の目的を満たすのは困難である。

 今回義務化されたストレス検査では、今後、具体的な検査項目が検討されるが、産業医や保健師がどこまでメンタル分野に対応できるのかという課題も残るため、実際の運用においては混乱を招く懸念もあるといえよう。
(文=海部隆太郎/ジャーナリスト)

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