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朝日誤報騒動、法的責任と罰則は?なぜ謝罪のみで許される?誤報抑止の法的整備を検証

文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員
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 しかし、発行部数が数百万部に及び、国民の数人に1人が購読し、大学受験の問題にも引用されるなど国民に極めて多大な影響力を持つ新聞業には、なんの規制もありません。それゆえ、どんなに取材の過程に問題があり、編集時に恣意や傾向的思想が闖入して誤報となり、国民はおろか世界的にも悪影響を与える結果となっても、なんのお咎めもないわけです」(同)

●誤報抑止のための法的整備

 新聞業を規制する法律を制定することは、言論の自由の制限にもつながりかねないという懸念もあるが、誤報の発生を抑止するためには、具体的にどのような法整備が考えられるのであろうか。

「かつて日本には、戦前に制定された新聞や雑誌を規制する『新聞紙法』という悪法が存在していましたが、もちろん言論を統制する法律を制定することが声高に主張されるべきではありません。一定規模の発行部数を持つ日刊紙に対し、以下の3点を法制化すべきだと考えます。

(1)取材にあたり取材先の人権を尊重する義務を設定すること
   取材の時間・場所や取材相手の家族・環境への配慮、取材を拒否された場合の対応等をルール付ける

(2)裏付け資料を具備し、正当な理由に基づく開示請求への対応を義務付けること
   事後的に記事の検証を国民の手に委ねる制度を設けることで、稚拙な取材に基づく報道を防止する

(3)自ら誤報と判断し、または司法機関に誤報と判断された際の対応、行動指針を、予め定めておくこと
   誤報の軽重やイデオロギーにかかわらず、一度誤報と判断した以上、統一的な対応をさせる

(1)の取材方法をルール化することは、貸金業者の債権取り立て行為が規制されている例もありますし、(2)についても、健康食品などの広告の方法につき実証性のない広告(不実証広告)を規制する例があります。
 
 もちろん、新聞においては『報道の自由』との関係から最大限の配慮が不可欠です。しかしながら今回の朝日の例でいえば、杉浦信之編集局長が『専門性の高い記者』とする記者ですら今回の誤報を引き起こすわけですから、『報道を規制するな、自主規制で十分だ』などといった新聞社の“強がり”だけではまかり通らない状況に陥っていると考えなければなりません。実は現在、私も朝日による誤報と目される記事によって苦しんでいるある組織の弁護活動に取り組んでいます。もちろん、司法判断がなされるまではその真否はわかりません。しかし、今回明らかになった朝日の組織的な“弱さ”を早急に自戒していただき、本件も含め適正な対応を切に所望する次第です」(同)

 今回の騒動を契機として、新聞をはじめとするメディアの誤報を抑止するための法整備やルールづくりが求められているといえよう。

 11日の会見で木村社長は、問題となった記事掲載に至った理由について、「秘匿性の高い資料だったため、(吉田調書を)少数の人間の目にしか触れないようにしていた。その結果、チェックが甘くなり、検証が遅れたと反省している」と釈明。また取材の過程において「命令に背いた人がいたという思い込みがあった。職員に取材はしたが話は聞けなかった」と説明している。また、朝日としての思惑や意図があったのではないかとの指摘に対し、「意図的な記事ではない」と否定している。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員)

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