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森トラスト、目黒雅叙園買収の舞台裏 時代と創業家に翻弄された歴史が残した訴訟リスク

文=編集部
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森トラスト、目黒雅叙園買収の舞台裏 時代と創業家に翻弄された歴史が残した訴訟リスクの画像1目黒雅叙園(「Wikpedia」より/Kamemaru2000)
 2008年のリーマン・ショック以後、最大級の案件として不動産関係者から注目されていた目黒雅叙園(東京)の売却先が決まった。森トラストが米投資ファンドのローンスターから約1300億円で買収した。

 目黒雅叙園はJR山手線目黒駅近くにある結婚式場、ホテル、オフィスビルなどからなる複合施設。森トラストが取得したのは目黒雅叙園のほぼすべての土地(約3万7000平方メートル)と敷地内にある以下の全5物件(延べ床面積は約15万平方メートル)。

・アルコタワー(オフィス)、目黒雅叙園(ホテル)…地上19階、地下3階
・東京都指定有形文化財「百段階段」…地上6階
・アルコタワーアネックス(オフィス)…地上16階、地下1階
・ヴィラ ディ グラツィア(チャペル)…地上3階
・アルコスクエア(店舗)…地上1階

 オフィスビルにはアマゾンジャパンやポルシェジャパン、ウォルト・ディズニー・ジャパンなど海外企業の日本法人が入居している。百段階段とはケヤキの板材でつくられた園内唯一の木造建築の通称。その階段沿いにつくられた7つの座敷棟宴会場のうちの4つが2009年3月、東京都の有形文化財に指定された。百段階段は太宰治の小説『佳日』にも登場。絢爛たる装飾を施された園内の様子は「昭和の竜宮城」と呼ばれた。01年に公開された宮崎駿監督の長編アニメ『千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルになったことでも知られる。

●一族の内紛で破綻、ローンスターが買収

 目黒雅叙園は細川力蔵氏が1931(昭和6)年、本格的な北京料理や日本料理を提供する料亭として開業し、国内初の総合結婚式場でもあった。細川氏が亡くなった後は同族による経営が行われていたが、一族間で内紛が起きた。運営会社の雅秀エンタープライズが02年8月、東京地裁に民事再生手続きの適用を申請して経営破綻。負債総額は883億円に上った。その後、最大の債権者であるローンスターが買収し、結婚式場の運営権は結婚式場大手のワタベウェディングに譲渡。ローンスターは土地建物を保有した。11年4月にアルコタワーアネックス、ヴィラ ディ グラツィア、アルコスクエアを新築した。

 今回目黒雅叙園を買収した森トラストは、森ビルグループの創始者、森泰吉郎氏の三男、森章氏が社長。森ビルグループは長年、兄の森稔氏(故人)が社長を務めていたが、父・泰吉郎氏の死後に分離・独立した。

 森トラストは非上場で不動産、ホテル、投資が3本柱。投資を担う森トラスト総合リート投資法人はREIT(不動産投資信託)市場に上場しており、都心大型オフィスビルを主体に商業施設、ホテルへ投資している。14年3月期の総資産は3340億円、営業収益87億円、純利益45億円を上げている。

●くすぶる訴訟リスク

 目黒雅叙園の敷地の一角に雅叙園観光というホテルがあった。興行師の松尾國三氏が経営しており、日本ドリーム観光と姉妹会社だった。松尾氏の没後、未亡人と経営陣による経営権争奪戦が勃発し、雅叙園観光と日本ドリーム観光に分離された。雅叙園観光は戦後最大の経済事件といわれたイトマン事件の主役である伊藤寿永光氏や許永中氏らの仕手戦の対象となり乗っ取られた。そのため1997年に倒産し、ホテルは解体された。雅叙園観光ホテルの跡地は地主である目黒雅叙園側に戻った。

BusinessJournal編集部

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