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小黒一正准教授の『半歩先を読む経済教室』(9月24日)

【提言】成長戦略としての政府不動産活用 全情報開示し国民から売却要求受ける英国の事例

文=小黒一正/法政大学准教授
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【提言】成長戦略としての政府不動産活用 全情報開示し国民から売却要求受ける英国の事例の画像1「国有財産情報公開システム HP」より

 日本では、2005年の経済財政諮問会議における行財政改革の議論を契機に、政府の資産・債務改革がスタートした。資産・債務改革の一環として、財務省は国有財産の有効活用・民間活用や国有財産の売却等をこれまで進めてきたが、14年8月30日付英紙The Economistに以下の興味深い記事掲載があった。

「『Popping property bubbles
  Choosing the right pin
  House prices in Europe are losing touch with reality again. Deflating the bubbles will not be easy』
 (Aug 30th 2014, The Economist)

  This month Britain’s central government launched a website that maps all its land and buildings, from offices to prisons, and invites the public to suggest better uses for them under a new “right to contest”. It has promised to release for sale any property whose current use it cannot justify.」

 イギリス政府が、庁舎から刑務所までのあらゆる土地と建物の位置を明らかにする専門サイトを構築し、政府不動産の有効活用に対する提案を国民に求め始めたという報道である。

 政策目的や内容の詳細は英国政府HPに掲載されているが、現在の政府不動産が不要であると思い、より有効活用できると考える国民は誰でも、政府に土地や建物を売却するように要求できるというものである。また、専門サイトをみると、その情報の豊富さに驚く。政府不動産の売却情報のほか、政府不動産の画像や地図上の位置、所有者や現在の使用用途などが一目で把握可能なものとなっている。

●限定的な日本の取り組み

 日本でも、2006年の国有財産法の改正などを行い、国有財産情報公開システムを開設し、国有財産の売却情報の充実を図るなど、イギリスと似た試みが進められている。その中には、未利用国有地に関する一時貸付要望の募集や事業用定期借地による貸付募集などもあるが、対象範囲が限られているのが現状であり、庁舎等を含むあらゆる政府不動産の有効活用に対する提案を国民に求めるイギリスとは大きく異なるものとなっている。なお、日本では国有財産の有効活用に関する提案については「ご意見箱」で収集しているが、これは財務行政に対する意見・要望の一環で政府は提案に回答する義務はなく、基本的に6週間以内に回答を行うとしているイギリスの施策とは異なるものといえる。

 国有不動産の有効活用に関するイギリスの試みが日本よりも優れているとは断定できないが、日本でも、成長戦略の一環として庁舎や官舎の一部を保育施設等に利活用する事例も出てきており、政府不動産の有効活用に対する提案を国民に広く求めることで、これまで政府では気が付かなかった効率的かつ効果的な活用方法が見つかる可能性もある。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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