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男性から女性に性転換した人は、赤ちゃんを産むことができるのか?

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 そのような背景によって、この問題は最高裁まで持ち込まれ、司法の判断を求める必要があったのでしょう。

 ところで、この判決も5人の裁判官のうち反対意見2名という僅差の判決でした。

 下の表も、補足意見、反対意見を読んでいて、私の琴線に触れたところをピックアップしたものです。

 前回の冒頭で、「『血は水よりも濃い』『産みの親より育ての親』、この2つのことわざは矛盾しているが、私たちはケースに応じて使い分けている」というお話をしました。

 最高裁の裁判官たちが、772条の主旨「子どもの利益」「家族の平安」を真摯に論じていることに疑いはありません。ただ、それが上記の異なる2つのことわざの観点から論じると真逆の結論になるということは、大変興味深いと感じました。しかし同時に、最高裁の裁判官の間で772条に対する考え方がこんなにも違っていてもいいのかと、かなり不安になってきました。

●男性から女性に性別が変わった場合、子を産むことはできる?

 さて、本シリーズの最後は、「男性から女性になった人は、赤ちゃんを産むことができるか?」で締めさせていただきます。

 このテーゼに対しては、2つの大きな問題があります。第1には、性同一性障害の治療として、性別適合手術で外形を変えることはできても、性染色体まで変えられないこと。第2に、胎児を育成させる器官(子宮)が存在しないことです。

 当サイト記事『同性間で子どもをつくることは可能か?将来的には高い確率で可能~その技術的検証』で、3つの方法について検討し、「同性間で子をつくりたい」というニーズに応えることは、将来的には可能となるだろうと結論を出しております。

 性同一性障害で性別を変えた人でも、上記の検討内容がそのまま当てはまるので、将来的には「男性から女性になった人は、子を産むことができる」と考えております。

 例えば、女性から男性になった人と女性のカップルの場合は、下の図のような方法が考えられます。

 しかし、男性から女性になった人と男性のカップルの場合は、女性になった人の幹細胞からiPS細胞によって卵巣をつくり、卵子を採取して男性の精子を注入した上で、さらに代理母の子宮に着床させる必要があります。つまり、上図よりもさらにもう一段難しさが増します。

 最近、代理母問題が大きな社会問題となっております。これらの問題を解決する手段は、やはり「人工子宮」の開発にかかっていると思います。iPS細胞によって子宮をつくり出すことは可能になると思いますが、その子宮を「運用・管理・制御」することはできません。脳の働きが必要となるからです。iPS細胞を前提としない方法では、どうしても人工的に製造できない体細胞組織(胎盤)があり、それが人工子宮の開発を困難にしているようです(参照『デザイナー・ベビー』<ロジャー・ゴスデン/原書房>)。

しかし、1月18日付NEWSポストセブン記事『東北大学が人工胎盤装置開発 極低出生体重児死亡率改善期待』において、東北大学が人工胎盤装置開発を行っていると報道されました。同記事では、「この技術を突き詰めていけば、女性は自分の体をまったく介さずに子供を産むことが可能になる。さらにはセックスや妊娠もなしに子供だけを手に入れることも実現するのではないか」という記述があります。

これらの技術の発展は、性別変更された人だけでなく不妊で苦しんでいる人にも、大きな希望になるだろうと思います。

●まとめ

 さて、今回で性同一性障害に関するシリーズは最後になります。このシリーズでは、痛み、苦しみから、自己意識、施術の内容、法律上の性別の変更の方法、日常生活での困難さ、さらに性同一性障害の方の潜在的人口数の推定なども行いました。そして今回、(法律上の)結婚と出産の問題、将来の出産の可能性に関して論を展開しました。

 この問題に対して無知であった私が言うのもおこがましいとは思いますが、今回の取材、調査を通じて、性同一性障害に関して社会が少しずつ理解を始めていると感じられることもありました。性の違和感で苦しむ人や、性別適合手術を受けて性別を変更した人が、苦しみを感じることなく生きることのできる社会や自分の子を産み育てることのできる技術が、遠くない未来に実現されるだろうことを私は本気で信じています。
(文=江端智一)

なお、図、表、グラフを含んだ完全版は、こちら(http://biz-journal.jp/2014/10/post_6308.html)から、ご覧いただけます。

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(http://www.kobore.net/gid.html)へお寄せください。

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