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吉田潮「だからテレビはやめられない」(10月13日)

“面白い”トーク番組の条件を検証 具志堅用高とカマキリを熱弁する香川照之のノーブルさ

文=吉田潮/ライター・イラストレーター
“面白い”トーク番組の条件を検証 具志堅用高とカマキリを熱弁する香川照之のノーブルさの画像1『アナザースカイ』公式サイト(「日本テレビHP」より)

 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 気になる人が出るなら観る。それが、ゲストを迎えて繰り広げられるトーク番組だ。私が好きなのは、ゲストに肉迫し、新たな一面を見せてくれる系。ただ単にMCがしゃべくりまくるだけで、ゲストの知られざる顔をお披露目してくれないと新鮮味は出ず、既視感にうんざりして終わってしまう。いくつかあるのだが、2つのタイプに分けてみよう。

(1)MC先行&暴走系

 まずは、鉄板&長寿番組の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)。時間帯が変更したが、違和感がなくすっかり定着した。いにしえのとき、1000年前から徹子がお昼正午の顔だったような気もするほど。徹子の「人捌き」はこの後も1000年続くような気がする。

 もうひとつは『A-studio』(TBS系)。笑福亭鶴瓶が極秘取材まで敢行し、ゲストの別の顔に迫る。鶴瓶テイストがやや強いこと、そして映画や番組宣伝のニオイが強いところは気になるっちゃ気になるが、面白いことは面白い。話題のドラマに登場した俳優をいちはやく登場させる「阿漕で敏速な手癖」は感心する。同じくTBS系の『ぴったんこカンカン』も同様で、売れ筋俳優に手をつけるの早いしな。

(2)切り口新鮮&金かけてます系

 まったく異なる分野の人間同士がお互いに質問攻めし合う、いわばトーク番組異種格闘技戦が『SWITCHインタビュー達人達』(NHK Eテレ)だ。最近では、「哀川翔×武井壮」「西村賢太×稲垣潤一」など、トークが弾むというよりは微妙な化学反応を楽しむほうが面白い放送回もある。もちろん、ときどきNHKの番組宣伝臭があるのだが、その「人選の妙」に心躍るときも多い。

 もうひとつは『アナザースカイ』(日本テレビ系)。ゲストにとっての「海外にある、第二の故郷」を紹介する番組だ。一社提供スポンサーのJT、金もってんなぁ~と感心する。でも他のトーク番組に比べれば、断然クオリティが違う。芸人MCに頼りきった内容ではなく、「外国ロケ」という手間暇をかけ、ゲストを高みにもっていく接待感、そして知的水準は高めの設定。他番組との完全なる差別化に成功している。こういう金の使い方、大賛成だ。

香川照之のノーブルさ

 で、10月2、10日と2週連続で『アナザースカイ』に私の大好きな香川照之が登場。以前からボクシングが好き過ぎて熱く語る香川の姿は、他局の番組でも映し出されていた。特に、具志堅用高が好きで、具志堅用高以上に具志堅用高を知っているオタクっぷり。具志堅がしゃべると具志堅の偉大さが薄れてしまうという逆転現象を忸怩たる思いで観ていたという香川。しまいには「具志堅さん、しゃべっちゃダメ!」と制する始末。でも、このあたりは既知の事実。今回は、動物や昆虫好きの一面も見せる。カマキリについて熱く語る香川。ワイプに映って声は消されても、しゃべりまくっている様子。しかもロンドンロケなのに。

 そう、香川はロンドンを訪れたのだ。旧知の友人(商社マンのお友達)に会い、知的階層に属している香川のノーブルさを改めて滲み出していた。しかも2週連続である。ボクシングとカマキリはいわばマクラね。後編ではさらに足を延ばしてフランスへ。暗黒のVシネ時代、同じセリフを108回も言わされた辛酸舐めまくりの苦労話が面白かった。こうした辛酸を土台に、芝居に対する考えが変わったともいう。

 さらには歌舞伎役者・市川中車として茨の道を選んだ理由も凄まじい。「息子もいるのに、自分の代でロープ(血のたとえ)を断ち切るわけにはいかない」という思い。思い出の地を訪れ、役者人生の来し方行く末を語る香川にしばし観入った。2週連続にするだけの濃厚な内容だった。

 海外ロケで一人語り+スタジオ収録でさらにえぐるの二段構え。『アナザースカイ』、あなどれん。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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