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西川淳「ボンジョルノ!クルマ」(10月17日)

F1の巨大な経済効果?国際ビジネスの拠点&世界を招く入口に利用、産業活性化に期待

文=西川淳/ジュネコ代表取締役、自動車評論家
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 しかし、そんな生真面目なスポーツ観が蔓延した結果、ファンのみならず自動車メーカーを含めた企業側も、「グローバルビジネスの拠点である」という現代F1興行の本質をあっさりと見逃してしまい、日本におけるF1ビジネスの活路を自ら阻害しているのではないだろうか。

 そのことを身にしみて感じたのが、今回の日本GPの2週間前に開催されたシンガポールGPを現地で観戦したときだった。ちなみにシンガポールにはF1マシンを生産するような大手自動車メーカーもなければ、国民的ヒーロードライバーもいない。純粋にF1を国家の威信を賭けたエンターテインメントとして、さらには金融を核とした「アジア&グローバルビジネスの拠点」という国家イメージのシンボルとして育て上げたのだ。初開催が08年のことだったから、たった数年で、世界最高のホスピタリティとビジネスチャンスのあるGPとして、認知されるに至った。

 印象的だったのは、世界中のVIPが集まる場所として機能していたことだ。F1に関わる企業のトップマネジメントだけじゃない。アジアの金融関係者、中東のオイルマネー王族、欧州の建設コンツェルングループ代表、アメリカの飛行機産業や食品産業のトップなどが集結し、パドックのメイン通りではそこかしこで“トップ外交”が繰り広げられていた。筆者が出会った数人のVIPは異口同音に、「レースを観ているヒマなんか実はないんだ」と語っていた。

 もちろん、ひとたびパドックの外に出てみれば、観客たちがレース展開に熱狂している様子がパノラマのように広がっていた。便利な市街地GPゆえに、多くの人が集まり、スリリングなレース展開に大熱狂しているのだ。その裏で、ひそかに、そして着々と数々のビッグビジネスが端緒を開いているのだ。

●巨大な経済効果

 F1ビジネスの巨大さは、GP一戦あたり200〜300億円の経済効果を生み出し、今年の場合は欧州やアジアを中心に19戦も開催されることから容易に想像できるだろう。F1 GPを運営するホールディングカンパニーが手にする収入(入場料、開催地支払金、テレビ放映料など)は、少なく見積もっても年間2000億円以上の規模であり、08年のリーマンショックですら、その発展を阻害することはなかった。

 日本はそんなモーターレーシングの頂点であるF1ビジネスから取り残されつつある一方、自動車製造業が大きな産業ファクターとして存在する。アジア新興国における国家的熱狂とは裏腹に、果たして欧米をも超越した成熟の自動車社会(=冷静な自動車文化)への道を歩み始めていけるのだろうか。もちろん、F1をはじめとするモータースポーツだけが日本のチャンスではないが、自動車開発と製造が世界に誇る日本の産業であり、今後も発展を期待する以上、グローバルエンターテインメントに成長したモータースポーツを利用しないという手はないだろう。

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17:30更新
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