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残業代ゼロ制度、真の狙いは中高世代の給与抑制?背景に企業を悩ます“逆転現象”

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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 その真の理由に比較的近いと思われるのが、今年5月28日の産業競争力会議課題別会合における榊原経団連会長の次の発言だ。

「現行の裁量労働制では、深夜労働の割増賃金が適用され、制度上時間外の割増賃金規制も残っているため、たとえ同じ仕事であっても効率的に短時間で働いた労働者よりも、残業手当等をもらう関係で、長い時間をかけた労働者の方が所得が高くなるといった問題がある。公平で透明性の高い賃金、処遇制度の実現という意味でも問題があると考えている」(「議事要旨」より)

 つまり、効率よく働いて定時に帰る人よりも、非効率な働き方で残業した人のほうが所得が高くなり不公平だという主張である。そしてこの後者に該当する層で、年収600万円以上となると40代以上の中高年社員に大体絞られてくる。

●企業を悩ます逆転現象

 実は今、多くの会社が頭を悩ませている問題がある。課長に昇進しても管理職ではない社員の給与が上回る逆転現象も起きているというのだ。例えば、ある住宅設備関連会社の課長の役職手当は10万円。だが、同世代の社員は残業代を月に15万円もらっているという。この会社の基本給は年功的な「社内資格給」が主体であり、資格給はほぼ同じなので非管理職の給与が高くなる。同社の人事課長は次のように内情を明かす。

「会社の期待で管理職になってもらっても、予算達成や部下の育成など責任が大きくなるのに給与はそれほど増えません。部下との飲み会でもお勘定を多く払う機会も多い。役員からも『かわいそうだ、なんとかならないか』と言われていますが、手当をこれ以上増やすのは難しいのが現実」

 是正するには給与制度の変革か、あるいは手っ取り早い策としては“部下なし管理職”ポストをつくる方法もある。実際に部下を持つラインの管理職にはなれない人たちを『専門課長』として遇し、残業代を支払わない企業も少なくない。しかし、それができなくなったと語るのは建設業の人事課長だ。

「設計やデザインなどの専門性を持つ40歳を過ぎた社員がたくさんいます。といっても管理職ポストが少ないですし、マネジメント能力が劣る人もいます。そこで直属の部下はいませんが、担当部門で力を発揮してもらう専門課長というポストをつくりました。ところが2年前に労働基準監督署の臨検が入り、(実質の管理監督者に当たらない)専門課長に残業代を支払わないのは問題だと指摘され、支払うように指導を受けました。以来、全員に支払うようになりましたが、結果的に残業代が支払われない“ライン課長”と総額では同じ給与をもらっている人もいます。なんとかしたいが、打つ手がないのが実情です」

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