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中沢光昭「路地裏の経営雑学」(10月22日)

注目の外部招聘経営者、なぜ“難しい”?改革を阻む複雑な事情 好業績企業ほど必要?

文=中沢光昭/経営コンサルタント
注目の外部招聘経営者、なぜ“難しい”?改革を阻む複雑な事情 好業績企業ほど必要?の画像1LIXIL本店(「Wikipedia」より/Rs1421)

 最近たまたま目に留まったので、有名コンサルティング会社が1980年代後半に出した企業戦略に関する書籍を読み返してみました。当時はまだ図表が手書きだったりしますが、書かれている企業が抱える課題について、その内容の本質は現在とあまり変わってないことが興味深かったです。

 外部招聘された経営者が機能するかどうかについて、前回連載記事では業績悪化に伴う「危機状態」に陥っている企業の場合について整理しました。今回はそうではない安定的かつ健全な企業の場合について考えていきます。危機から脱却しようという企業と現在すでに儲かっている企業においては、様相が異なります。

 業績好調な企業において、上場前から最大株式割合を継続して保有する権力者、例えばオーナーがなんらかの目的を持って外部から経営者を招聘する場合、オーナーと新しい経営者の間でミッションを共有し、どこまで新経営者が権限を委ねられているのかを明確に定めておく必要があります。理想的な実例として、2011年にLIXILグループ社長に就任した藤森義明氏(元米GE副社長)と最大の主要株主である潮田洋一郎会長の関係がメディアなどでよく取り上げられますが、共有するミッションも可能な限り具体的であったほうが良いです。例えば「いま海外の売上比率が30%だが、3年以内に50%にしたい」などです。逆にダメな例としては「会社の体質、社員の気質を変える」などあいまいな内容です。

●育ててきた自負があるがゆえの……

 オーナー社長にとって最大のハードルは、本当に身を引くことにあります。口頭や書面でどんなに約束しても、人間同士ですから時間がたてば気持ちがどう変わってくるかはわかりません。特に創業したオーナー社長やその一族においては、変わる可能性が高いです。一度取り交わした約束でも、時と場合によっては覆すくらいの情熱やパワーがなければ、会社を創って育てていけないという側面もあるのかもしれません。

 安定した企業において短期の業績だけを考えてしまえば、内部昇格でも外部招聘者でも、誰がトップに座ってもそれほど結果は変わりません。それゆえ、わざわざ外部招聘する経営者への期待の軸としては、将来への仕込みや、変革させて一段違う内容の業績を出すこととなりますが、結果が出るまでには必然的に時間がかかります。解決しなければいけない課題は内部要因だけではなく外部要因も関わりますし、社員を統率するのに時間がかかってしまうからです。

 外部から経営者を招聘した場合、この時間をオーナーが粘り強く待てるかといえば、なかなか難しく、当然ながら社内からは反発が出てきます。反目する古参社員から新経営者に対するネガティブな評判が入ったりすると、自分の決断が正しかったのかと、やや気持ちが揺らいでしまったりもします。また、その理由が年齢的なものであろうと不可抗力的なものであろうと、オーナーにしてみれば自分や一族が成し得なかったことを他人が達成するのを目の当たりにすると、複雑な心境がもたげてくることもあるようです。

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

企業再生コンサルタント兼プロ経営者。
東京大学大学院工学研究科を修了後、経営コンサルティング会社、投資ファンドで落下傘経営者としての企業再生に従事したのち、上場企業子会社代表を経て独立。雇われ経営者としてのべ15期以上全うし、業績を悪化させたのは1期のみ。
事業承継問題を抱えた事業会社を譲受け保有しつつ、企業再生とM&Aをメインとしたコンサルティングおよび課題内容・必要に応じて半常勤による直接運営・雇われ経営者も行う。シードステージのベンチャー企業への出資も行う。
株式会社リヴァイタライゼーション 代表・中沢光昭のプロフィール

Twitter:@mitsu_nakazawa

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