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損保J興亜合併、3位定着・三井住友の焦り いびつな提携捨て、業界再々編の主役になるか

文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト

三井住友海上の焦り

 この動きに穏やかでないのが三井住友海上だ。同社は10年、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)と経営統合し、持ち株会社のMS&ADインシュアランスグループホールディングスを設立。グループでの収入保険料は15年3月期に2兆9000億円を超える見通しで、東京海上日動を中核とする東京海上ホールディングスを僅差で上回り、国内首位になる。だが、単体での収入保険料予想は1兆4330億円で上位2社の背中は遠い。

 もちろん三井住友海上も手をこまねいているわけでなく、あいおいとの合併を画策する。両社は一部の事業分野のみを片寄せする「機能別再編」に乗り出している。共同で商品開発が可能な体制を整えたほか、地方の事業所や取引のある代理店の再編にも着手する。「もはや合併したほうが効率的では」との声は内外から聞こえてくる。

 実際、三井住友海上は前社長の江頭敏明氏も現社長の柄澤康喜氏も「(あいおいとの)将来的な合併は否定しない」と前のめりな姿勢を隠さないが、あいおいの猛烈な抵抗にあって一筋縄ではいきそうもないのが実情だ。三井住友海上の社員は「収入保険料もあいおいは三井住友の8割程度あるため、簡単にのみ込めない。その上、あいおいにはトヨタ自動車という切り札がある」と指摘する。

 あいおいはトヨタが筆頭株主だった千代田火災海上保険の流れをくむため、トヨタ直系の国内販社での取引などトヨタマーケットをがっちりと押さえている。あいおい社員は「イケイケの三井住友とは社風が違いすぎる。国内がじり貧の中、単独での生き残りは難しいが、トヨタを抱えている以上、すぐに会社が傾くことはない。三井住友に好き勝手はさせない」とささやく。

 実際、ホールディングスの社長人事でも一波乱あった。三井住友海上出身の江頭敏明氏が退き、現三井住友海上トップの柄澤氏が就任したのは既定路線だが、会長職を新設してあいおいの鈴木久仁社長がおさまった。鈴木氏がトヨタをバックに土壇場でねじ込んだとの見方が業界では支配的だ。ホールディングスの新体制を発表した記者会見では、記者に「船頭多くして船山にのぼるといわれますが」と多頭体制を揶揄され、業界内の失笑を買った。いびつな提携体制であることは誰の目からもあきらかだ。

 ジレンマを抱えながらも、企業規模重視の保険業界でこのまま手をこまねいているのか。業界関係者は「東京海上日動も業務提携関係にあるJAの傘下の共栄火災海上保険に秋波を送っている」と声をそろえる。損保ジャパン日本興亜の誕生が、国内損保業界のさらなる再編の号砲になる可能性も高い。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

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