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ネットやビジネスで横行するパクリ問題、著作権侵害成立しない?損害賠償の対象に?

文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト、協力=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員
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 これは意図的な引用なのか、それとも同様のサービスであれば自然と似てしまうものなのだろうか。ベンチャー企業の動きに感化されて大手企業も動き出すということであれば、市場も刺激され活性化し、そういった将来性のあるベンチャーを買収するといった手段もあるはずだ。にもかかわらず資金力も人材も豊富なはずの大企業のやることが「意図的な類似表現」だとすれば、それは営業妨害にほかならない。

●損害賠償の対象となる場合も

 新技術開発の活性化や技術革新促進の観点からも、知財の侵害をより厳しく取り締まる仕組みが必要といえるが、特にウェブサイトにおける盗用まがいの行為は、果たして著作権侵害に該当するのであろうか? 弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員の山岸純氏は次のように解説する。

「当事務所の知的財産部門にも、ウェブサイトに関する『マネた』『パクられた』といった法律相談が多く寄せられます。特に傾向といえるほどではありませんが、こうした問題は、いわゆる健康食品関連や美容関連のウェブサイトに多く発生しているようです。

 実はこの『ウェブサイトのパクりの問題』は、知的財産権の一つ、著作権侵害が認められるか否かという問題に集約されるのですが、残念ながら他のウェブサイトを真似ることで著作権侵害が成立することはほとんどありません。そもそも、著作権とはある人の考えや感情といった精神的な活動を創作的に表現した文芸、美術、音楽といったものに発生します(著作権法2条参照)。しかしながら、ウェブサイト上の商品やモデル、キャッチコピーの配置や色合いで構成されるレイアウト自体は、精神的な活動を創作的に表現したものとまではいえず、アイディアや手法といったレベルのものに過ぎないことから、いくら、このようなアイディア、手法が真似られても、著作権侵害は成立し得ないのです」

 だが、山岸氏によれば、ケースによっては損害賠償の対象となることもあるという。

「もちろんこの問題がまったくの野放し状態にされているわけではなく、場合によっては、不正競争防止法2条1項1号が規定する不正競争として損害賠償の対象となり得ます。同条は、他人の商品の表示として世間に広く知られている表示(例:商品のパッケージやウェブサイトなど)とまったく同じ、またはよく似ている表示を使用したりして、その表示を使用した商品を販売することなどを不正競争と定義し、さらに、既存の顧客を横取りしようといった不正の目的がある場合には、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金といった刑罰も科しています。

 もちろん、不正競争として損害賠償の対象となったり刑罰の対象となるには、前述のとおり、世間に広く知られている、まったく同じ、またはよく似ている表示、不正の目的といった諸条件が揃わなければなりませんが、ウェブサイトのパクり問題は、決して軽い問題では収まらない事件に発展する可能性を孕んでいることに十分注意しなければなりません」

 軽率な盗用行為は、大きな社会的制裁を受ける事態を招きかねないことを肝に銘じておく必要があるといえよう。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト、協力=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員)

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