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小黒一正准教授の「半歩先を読む経済教室」(11月5日)

日銀サプライズ追加金融緩和、出口戦略困難に 長期金利上昇やインフレ制御不能の懸念も

文=小黒一正/法政大学准教授
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 では、今回の追加緩和で上記シナリオでの結果はどう変わったのか。簡単に試算したものが、冒頭の図表「日銀が抱える長期国債の予測(簡易試算)」である。

 まず、日銀の資料(10月31日)によると、14年末に日銀が抱える長期国債は200兆円である。また、長期国債をグロスで年間約110兆円増やすとしていた日銀の買い入れボリュームを毎年10兆円ずつ減少させていく場合、日銀の買入額(グロス)は、15年に約100兆円、16年に90兆円といった具合に減少していく。

 この時、15年において日銀が抱える長期国債の平均残存期間が7年であると、償還分は29兆円に過ぎないから、日銀が抱える長期国債はネットで71兆円(=100兆円-29兆円)増加し、271兆円(=200兆円+71兆円)になる。このような膨張は16年以降も続き、日銀が抱える長期国債の平均残存期間が7年で変わらない場合、そのイメージを試算すると、図表の上段のようになる。この場合、ピーク時の19年に保有する長期国債は382兆円にも達する可能性がある。

 また、図表の下段は、日銀が買い入れ(グロス)を行う長期国債のボリュームを毎年5兆円ずつ減少させていく場合のシナリオだ。この場合、日銀のバランスシートは急速に膨張していき、ピーク時の22年に保有する長期国債は473兆円に達する可能性がある。

 なお現在、政府債務が増加しても長期金利が上昇しないのは、日銀による異次元緩和が長期金利を抑制している―いわゆる「金融抑圧」―ためである。しかし、インフレが顕在化し、その圧力で長期金利が上昇を始めると、政府債務の利払い費は急増してしまう。それを防ぐには、マネタリーベースを縮小する必要がある。日銀は国債などの資産を売却し、バランスシートを縮小しなければならない。だが、この措置も長期金利を上昇させてしまう。現在の金融緩和政策の出口戦略は相当の困難を伴い、インフレを十分に制御できないリスクが存在するわけだ。このインフレリスクが顕在化する前に、財政再建を進める必要がある。
(文=小黒一正/法政大学准教授) 

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