ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
来年、発生から20年となる地下鉄サリン事件(写真)。その節目の年に、最後のオウム裁判が行われる見込みだが、死刑囚の尋問をめぐって、検察と弁護団が激しく対立している――。
●死刑囚証人が「自暴自棄になって第三者を巻き添えに」する?
高橋被告は、地下鉄サリン事件でサリンを散布する実行役を車で送迎する運転手役であり、サリンと同様に猛毒の化学兵器VXを使った殺傷事件、假谷さん拉致事件、都庁爆弾事件で起訴された。裁判員裁判で裁かれ、早ければ来年1月にも初公判が開かれる、と報じられている。
検察側は各事件での現場指揮者とされる、教団内で高橋被告の上司だった井上嘉浩、サリンなどの製造に携わった中川智正、地下鉄事件で高橋被告が送迎した実行役の豊田亨、他路線での実行役の広瀬健一、林(現姓・小池)泰男、そして地下鉄事件では高橋被告と同じく実行役でVX事件にも関わった新実智光の6死刑囚を証人請求し、認められた。
高橋被告と同じく、特別手配された平田信、菊地直子両被告人の裁判では、教団の元関係者の証人尋問の多くが、証人席を衝立で覆い、法廷への出入りの際にはアコーディオンカーテンを引いて、傍聴席からは見えないような遮蔽措置が取られてきた。それが行われなかったのは、無期懲役などで服役中の証人のみだ。
死刑囚の証人出廷については、心情の安定に差し障りがあるとして、拘置所が強く反対。それでも、証人の数を最小限に絞り、裁判所はできる限り法廷での尋問を行ってきた。これまで4人の死刑囚が証言したが、拘置所内での出張尋問となった土谷正実死刑囚を除く、井上、中川、林の3死刑囚の尋問は法廷で行われた。しかし、いずれも厳重な遮蔽措置が行われた。
すでに服役を終えて社会に復帰している元信者らが、差別や偏見を恐れて証人出廷を躊躇することを防ぐために遮蔽措置を行うことについては理解できなくもないが、死刑囚まで遮蔽するのは、おかしいのではないか。しかも、死刑囚自身がそれを望んでいるわけでもない。
それどころか、平田被告の裁判に弁護側証人として出廷した林死刑囚は、一人の人間として普通に尋問を受けることを強く希望。自身の弁護人に次のような手紙を書き送っている。