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江川紹子の「事件ウオッチ」第16回

オウム裁判法廷で奪還、襲撃、殺傷事案が起こる?誇大妄想で被告の権利を侵害する検察

文=江川紹子/ジャーナリスト

 これに対し、高橋被告の弁護人は、憲法で公開裁判を受ける権利が保障されていることを指摘。さらに、「傍聴人には裁判を自己の五感で見聞する権利が保障されている」「憲法は法廷で行われる『手続』を傍聴人に見聞させることを要請している」などとして、国民の知る権利や報道の自由を侵害する重要な憲法問題と位置づけ、遮蔽措置に強く反対している。

 法廷は、パブリックな場所である。その公開が制約されるのは、性犯罪の被害者が被告人や傍聴人の前では証言しにくいなど、特別な事情がある時に限られなければならない。当たり前の話である。

 しかも、高橋被告の裁判に証人出廷が決まった死刑囚も、その多くが遮蔽措置は望んでいないようだ。これまでに4人が弁護団の求めに応じて、「特別な配慮はまったく不要です。傍聴人との聞に遮へい措置を施さなければ、正々堂々と自分の思うところを話せないなどということは微塵もありません」とする上申書を提出している。

 死刑囚もまた、刑が執行されるまでは、1人の人間である。1人の人間として、証言の義務を果たしたいという思いを否定し、遮蔽でその姿を覆い隠してしまうのは、彼らの人間としての尊厳を傷つけることにもなる。

 公開裁判の保障や国民の知る権利にも関わる憲法問題が、非公開の公判前整理手続という密室の中の手続で決められようとしているのもおかしい。

 高橋被告の公判で、死刑囚が証人出廷する際の遮蔽措置には、強く反対する。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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