企画面も見直しを図り、ご当地アイドルユニット「SKNフラッシュ8」の結成、尼崎市非公認のご当地キャラクター「ちっちゃいおっさん」を園田競馬応援大使に任命するなど、流行を取り入れたプロモーションを試みた。来場者からは「今までの園田競馬場とイメージが変わった」との声が増えたという。

●進むインフラ整備

 筆者はこれまで国内の数多の地方競馬場を訪れてきたが、若者や家族連れが固定客として定着するにはまだハードルが高い、というのが正直な感想だ。理由としては、運営資金不足からくる施設の老朽化や、子供連れでも安心して観戦できる環境の整備など、インフラ面の問題が大きい。各競馬場とも競馬のレジャー化を掲げているが、東京・大井や神奈川・川崎など一部を除いて、競合するレジャー施設に比べて若年層へのアプローチという点に関しては課題が残る。

 10月某日。ナイター開催日に合わせて、阪急電鉄・園田駅から発着する無料のシャトルバスに揺られ園田競馬場へ向かった。

 車中では50~60代とおぼしき男性たちが、スポーツ新聞の馬柱に目を通している。この日は、そのだけいば出身で日本中央競馬会(JRA)のG1ジョッキーである小牧太が協賛する「小牧太カップ」の開催日ということもあり、長年園田競馬場に通い詰めるオールドファンが多いようだ。

 競馬場到着後、時刻はまだ16時を回ったところで、場内を散策してみることにした。大学生風の若い男性や家族連れがちらほら見える程度で、大多数は中年以上の男性客といったところ。

 そんな様子が一変したのは、18時を過ぎた頃だった。一斉にライトアップが始まり、それを見越したかのようにビールを片手に人々が集まってきた。若いカップルや男女のグループや、スーツを着た仕事帰りのサラリーマンも多い。手始めに若いカップルたちに話を聞くと、「彼氏が競馬好きなので、ついてきた」などと、競馬デートを楽しんでいるといった意見が大半を占めた。仕事帰りに立ち寄ったという会社員グループは「ビアガーデンの季節が終わったので、最近は“競馬飲み”が社内でブームです。100円から食べ物があるので、飲み食いしても2000円程度で財布に優しいところがいいです。馬を肴に乾杯というのも、なかなか粋な遊び方だと思います。帰りに飲み直すことも多いので、阪急電鉄、西日本旅客鉄道(JR西日本)、阪神電気鉄道と各路線に向けて無料バスが運行しているのは大きいです」と、それぞれの楽しみ方で競馬場の雰囲気を満喫していた。

●印象的な女性客の声と今後の課題

 来場者の中には、女性だけで来場しているグループもあった。そのグループに話を聞いてみると、「数カ月前まで競馬初心者でした。旅行先で乗馬を体験して馬に興味を持ち、友達と競馬場に行ってみようと思い立ったのがきっかけです。馬券の買い方もわからなかったのですが、悩んでいる私たちを見て、『おねえちゃん、この馬を買うといいよ』と、馬券の買い方を丁寧に教えてくれる人がいました。その馬券が当たったことで、定期的に来るようになりました。そんなちょっと混沌としていて、非日常な空間もハマった理由ですね」と語ってくれた。

 ほかの女性グループに、「女性だけで競馬場に来ることに不安はないか?」と尋ねてみると、「最初は不安だったけど、実際に来てみると印象が変わった」との答えが返ってきた。今後改善してほしいポイントとしては「きれいなライトアップがあるので、もう少し女性向けの飲食店や飲み物などがあれば、競馬に興味がない友達も誘いやすい」と、改善を求める意見もあった。

 地方競馬の総売得金の増加は、オッズパークや競馬モール、IPATといったインターネット上での馬券購入額の増加によるところが大きく、この上昇傾向がいつまで続くかは不透明だ。兵庫県競馬組合の広報担当者も「新たな競馬ファンを獲得することが最優先課題です。ヘビーユーザーだけでなく、今はあまり競馬に関心を持っていない方々に一度競馬場へ足を運んでもらえるような施策を実施していきたいと考えています。莫大なお金をかけなくても、アイデアで勝負できるはずです」と話す。

 地方競馬が生き残っていく上で、新規のファン層獲得は大きな要素となりそうだ。各主催者が今後どういった舵取りを見せるのか、注目したい。
(文=栗田シメイ/Sportswriters Cafe)

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