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碓井広義「ひとことでは言えない」(11月9日)

女優が熱戦!観るべき秋連ドラ3本を厳選&解剖 アラフォー女性の本音、エンタメ全開…

文=碓井広義/上智大学教授

 永作の夫・藤木直人は、妻と愛人にまさかそんなことが起きているとは夢にも思わない。だから、いつものように石田のマンションを訪れ、彼女を抱く。自分の親友である石田だと思って行為に及ぶ藤木に、永作はどんな思いで応えていたのか。とても残酷で、同時にとてもエロチックな場面だ。見る側(視聴者)は真相を知っているが、当事者(登場人物)はそれを知らないという構図は、物語作りの手法のひとつである。

 2人の心が入れ替わる直前、永作に浮気を追及され、反撃する石田が口にしたセリフがすごい。「してないんだってね、何年も。子供が生まれてからか。(わずかに笑って)私とはしてるよ、会うたびにね、楽しくセックスしてる」

 脚本の岡田惠和は、専業主婦である永作と独身の映画プロデューサー・石田を対比させながら、アラフォー女性の建前と本音をじわじわとあぶり出していく。女性はもちろん、男性視聴者もまた目が離せないはずだ。

●『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系/主演:綾瀬はるか

 綾瀬には『ICHI』『ひみつのアッコちゃん』『万能鑑定士Q ~モナ・リザの瞳』など、いくつもの主演映画がある。しかし、その魅力を一番引き出していたのは『プリンセス トヨトミ』だろう。綾瀬は会計検査院の上司、堤真一をサポートする調査員役だ。生真面目で独特のカンの良さを持つ一方、超マイペースで、どこかヌケていて愛嬌がある。脇役にもかかわらず、この作品のテイストを左右する存在感があった。 

 綾瀬にとって同ドラマは、テレビドラマの代表作になるかもしれない1本だ。ヒロインの青石花笑(綾瀬)は物産会社の地味なOL。30歳になるが、いわゆる男性経験はゼロである。

 そんなアラサー女性が9歳年下のバイト青年(福士蒼汰)と一夜を共にしてしまう。恋愛に不慣れで自分の気持ちに対応できず、小さなことで一喜一憂する綾瀬。しかも同じビルにある会社のイケメン経営者(玉木宏)まで接近してくるではないか。 
 美人でいながら、ちょっと天然のとぼけた感じを醸し出せるのが綾瀬だ。その魅力と今回の役柄がうまくマッチしており、世間知らずと不器用さと妄想癖にもほどがあるヒロインに、つい共感してしまう。綾瀬はるかの“空気投げ”的演技がさえる、異色の恋愛ドラマだ。
(文=碓井広義/上智大学教授)

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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