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香港デモ、中国へ返還後の17年間に不満爆発 貧富差超拡大、親中派支配、囁かれる資金源

文=藤野光太郎/ジャーナリスト
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香港デモ、中国へ返還後の17年間に不満爆発 貧富差超拡大、親中派支配、囁かれる資金源の画像1「Thinkstock」より

●香港トップの行政長官立候補者は中国政府が選ぶ

 香港島の西側に位置する太平山(ヴィクトリア・ピーク)には、中腹を周回する盧吉道(ルガード・ロード)がある。無理をして山頂まで行かなくても、この道を北側に回れば、香港島と九龍半島に挟まれたヴィクトリア・ハーバーの「百万ドルの夜景」を眺望できる。目前に広がる湾の手前には、政治・経済の中心である金鐘(アドミラルティ)や商業地区の銅鑼湾(コーズウェイベイ)、対岸の九龍半島中部には繁華街の旺角(モンコック)――いずれも長期化する香港デモの闘争現場だ。

 香港の主権が英国から中国に返還されて今年で17年。この間、香港は中国における「特別行政区(中国香港)」として経済的主権を与えられ、中国政府はこの「一国二制度」をテコにして、「台湾の統合」と「中国経済の成長エンジンづくり」を実現しようと計画した。前者は今も台湾側が断固拒絶しているが、後者はすでに実現している。現在の香港政府トップは梁振英行政長官。建設業界出身で筋金入りの親北京派だ。中国は1984年の「中英連合声明」で1997年の返還から2047年までの50年間、香港で社会主義政策は実施しないことを合意した。猶予期間は33年も残っている。

 その香港で、ポスト梁振英を決める17年の行政長官・普通選挙制度の内容に対する反発から今回のデモが始まった。政府が今年8月末、次のような内容の取り決めを発表したからだ。

「候補者は1200人の指名委員会で過半数の支持を得た者から2~3名に絞る」
「指名委員会は政界、工商・金融界、専門業界、労働・宗教界の4大分野から選出する」

 つまり、立候補者は(事実上)政府が選ぶということだ。この発表を受け、民主的な選挙に変更するよう訴える若者や市民が蜂起し、民主化デモが冒頭の各地区を埋め尽くした。警察当局がデモ隊に向けて催涙弾を撃ち放った翌日の10月1日、デモ参加者は実に10万人に膨れ上がった。香港当局が金鐘のバリケード強制撤去を始めたのは11月18日。デモの経緯はすでに世界中のメディアが報じている。

●限界に達した混乱への不満

 しかし、17年の選挙問題は、民主派の香港人にとって爆発のきっかけに過ぎない。学生や市民の不満と反発は、今回発端となった不公平な選挙方法だけが理由ではないからだ。

 返還前後の時期に遡って、香港の情勢をざっと振り返ってみよう。反中派の富裕層の大半は返還前に国外へと脱出しており、当時居残った香港人の多くはこうした層以外の人々。返還後、さまざまな場面で「香港人」としてのアイデンティティが崩れる機会が相次いだ。返還と同年に勃発したアジア通貨危機や03年の感染病SARS流行で、不動産価格が軒並み下落した。そして、この10年余、中国大陸との人的往来が盛んになったことで香港の秩序が崩れ、その混乱が限界に達していたのである。

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