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もぎ取られるサラリーマン 保険料増額と残業代ゼロ制度、選挙で議論封印のツケは国民に

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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 高齢者医療制度には65~74歳の前期高齢者財政調整制度と75歳以上の後期高齢者医療制度の2つがある。前期高齢者は約1600万人。国民健康保険(国保)、全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合(健保組合)、公務員の共済組合の4つの組織(保険者)があるが、そのうち1290万人が国保に集中し、医療費は他の3つの保険者が拠出する納付金で支えられている。

 後期高齢者医療制度は4つの保険者の支援金と公費で賄われている。そのうちサラリーマンが加入する健保組合の保険料収入に対する前期と後期の制度への拠出比率は47.7%(14年度)と約半分を占めている。被保険者1人当たりの保険料は年間約46万円。そのうち半分の20万円強が高齢者医療に拠出されていることになる。

●深刻な健保組合の財政

 健保組合の財政も深刻だ。後期高齢者医療制度がスタートした08年度以降7年連続で経常赤字が続いている。赤字組合は927組合で、全1419組合の65%(13年度末)に当たる。赤字を回避するには唯一の収入源である保険料収入を増やすしかないが、当然保険料率を引き上げることになり、08年の7.4%(労使折半)から上昇し14年度は8.9%に達している。仮に10%を超えると、国の補助がある協会けんぽの保険料率より高くなる。そのため、健保組合を解散し、協会けんぽに移行した組合も多い。1994年度から14年度にかけて188の組合が解散している。すでに保険料率10%超えの組合も少なくはなく、その数は198組合に上る。11%を超えている組合が19もある(14年2月末現在)。

 だが、経常赤字だからといって即解散するというわけではない。健保組合は個々に積立金を保有しており、保険料率の維持と義務的経費を支払うために積立金を取り崩している。経常赤字は繰り入れ分を除いた収支の赤字であり、積立金がある限り破綻することはない。しかし、07年度末に健保組合全体で2兆8000億円あった積立金も毎年3000億円程度取り崩され、14年度末の残高は1兆1000億円に減少すると推計されている。

 健康保険組合連合会の幹部は、次のように指摘する。

「最低限の積立金として7000億円強は確保しておく必要があり、そうなると使える積立金は4000億円。維持できるのは2年程度だが、体力のある企業は保険料率を上げるか、最悪の場合は借金するしかない」

 これに追い打ちをかけるのが、団塊の世代の高齢化だ。団塊世代全員が来年の15年度から65歳に達し、前期高齢者となる。14年の前期・後期の健保組合全体の拠出額は3兆4000億円だが、20年には3兆8800億円、25年は4兆4200億円になる(厚労省推計)。どのくらいの健保組合が生き残れるのか、生き残るにしても保険料率の上昇は避けられないだろう。

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