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もぎ取られるサラリーマン 保険料増額と残業代ゼロ制度、選挙で議論封印のツケは国民に

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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●シルバー民主主義の弊害

 一方の当事者である高齢者の負担はどうなっているのか。後期高齢者医療費約14兆円の高齢者の保険料は1.1兆円、実質7%程度にすぎない。1人当たりの月額保険料の平均は約5670円(基礎年金受給者は370円)と低い。加えて窓口負担は現役世代の一律3割に対し、75歳以上は1割負担。70~74歳については08年に2割負担が法律で決まっているが、与党の選挙対策もあり延長され、ようやく今年4月に70歳になる人から順次2割に移行していくことになった。もちろん貧困世帯もあるが、支払い能力の高い高齢者も多く、応分の負担による医療費抑制策も必要だ。

 給与が伸びない中で、社会保険料などの法定福利費は着実に上昇している。現金給与総額に占める法定福利費は90年度の10%から12年度には14.4%に達している。年金保険料率は17年に18.3%(労使折半)で固定されることになっているが、健康保険料は歯止めなく上昇していく。保険料が早晩11%に達すると、年金保険料との合計で29.3%。従業員が半分の約15%を支払うので、月給30万円の人はこの2つだけで4万5000円も差し引かれることになる。

 自分で使える手取額が低下していけば、なんのために働いているのかと働く意欲を失う人も出てくるかもしれない。政治家は選挙に勝てないので、高齢者に負担を求めることはしない。シルバー民主主義と揶揄されるゆえんであるが、このままでは現役世代の負担は膨れ上がるばかりだ。

●残業代ゼロ制度

 今回の選挙で議論が封印されたもう一つのテーマ、残業代ゼロ制度は、一定のホワイトカラー労働者について法律で定めている休憩・休息時間の付与、深夜労働、日曜・祝日労働などに関する労働時間規制の適用を外そうというものだ。運用されれば、時間外の割増賃金の支払い義務もなくなることになる。

 1947年の労働基準法制定以来の大改正となる労働時間規制をなくすもので、こちらも法案の具体的制度設計について厚労省の審議会で検討を進め、15年に法案を提出する予定だ。この制度は第一次安倍政権下で導入が議論され、世論の批判を浴びて廃案になったが、第二次安倍政権下では成長戦略の労働改革の目玉として装いを変えて再浮上した(「日本再興戦略」改訂2014)。

 ところが、11月17日を最後に審議会は開催されていない。本来は次の会議で具体的な対象者の議論を行う予定だった。おそらく労働者に不利益をもたらす法案の審議をしていることを世間に知られると、選挙に影響を与えると懸念したからだろう。

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